185センチあるAさん、当時体重は78キロ。肥満体形ではなく、ダイエットのためではなかったが、初めの3週間で5キロ、半年しないうちにさらに5キロ落ちた。

「みるみるやせたので、周囲の人は、何か病気をしたんじゃないかと思ったようですが、体調は快調そのものでした。3週間たったあとに試しにパンを食べてみたら、胸焼けするような感じがして、ぐったりきた」

 その後、海外旅行先でパンかパスタを食べるしかなくなったのをきっかけに、グルテン摂取を解禁したが、いまでも少し体調が悪いなと思ったら、グルテン断ちをするのだという。

 遅延型フードアレルギーは、IgE抗体が関係する即時型のアレルギーと違って、IgG抗体が引き起こすアレルギーだ。数時間から数日かけて症状が出るため、自覚がない人が多いが、アトピー性皮膚炎、慢性疲労、頭痛、うつなどさまざまな慢性的不調の要因になっている場合がある。そのひとつに、肥満もある。Aさんの場合は肥満ではなかったが、体重減少とともに、体の状態が改善された。

 ダイエット外来やアレルギー科を持つエミーナジョイクリニック銀座(東京都中央区)では2010年からIgGフードアレルギー検査を導入している。予防医療や機能性医学に詳しい同クリニックの伊東エミナ院長に話を聞いた。

「肥満にはさまざまな原因が考えられます。ストレス、背骨の歪みからくる自律神経や代謝の問題、そして腸の問題です。IgGは、代謝や腸の状態と関連性があると言えるでしょう」

●炎症が脂肪蓄積の遠因

 ダイエットとは、要は代謝の問題だと伊東院長は言う。代謝の役割を担っているのは、細胞の中にあるミトコンドリア。エネルギー工場のようなもので、ミトコンドリアがうまく働かず滞ってしまうと、脂肪を燃やせず、取り入れるエネルギーのほうが過剰になって、やせなくなる。

「アレルギーとは、つまり炎症です。炎症は体にとってストレス。やせないということを肥満ととらえがちですが、実は炎症の悪循環なんです。そこにかかわるひとつの要素として、IgGアレルギーがある」と伊東院長。

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