「オアシスみたいなバンドはこれからも絶対に出てこない。俺たちが他のバンドより優れてるからじゃない。俺たちが基本的にこんなことはどうでもいいと思ってるからだ」

 この「どうでもいい」という言い回しが意味するのは、

「人生はゲーム。だから一応一番を目指すし、やることはやるけど、一番になれなくても人生が終わるわけじゃない。全部失ってもまたやり直せばいい」

 という醒めた人生態度。アメリカ人のがむしゃらな上昇志向との対比で、イギリスの、とりわけ労働者階級出身のミュージシャンがしばしば口にする「Don't take it seriously(マジメになりすぎない)」というフレーズに通じる生き方だ。

●貧しさも全部見せる

 他のバンドなら神経衰弱になって活動停止に至りそうなときも、オアシスは大口を叩き続けた。その根底には生まれ持った才能やエネルギー、図々しさに加え、このタフな人生観があったのだろう。貧しい子ども時代をカットしようとした監督に、ノエルは言ったという。

「いや、そこは残したほうがいい。公営育ちの俺たちにできたんだからおまえらにだってできる、と若い連中に伝えたいから」

 ファンなら気になるのは再結成の可能性。兄弟と今もメル友という前出のマッギーに聞くと、

「ないない、あり得ない。いまだにおふくろさんを介してしか話ができない状態なんだよ!」

 兄弟が同じステージに立つ姿が見られるのは、この映画だけなのかも。(ライター・鈴木あかね)

AERA 2016年12月26日号