「僕は、クリントン陣営でボランティアの訓練を受け、トランプ支持者でも公平に扱った。とにかく、投票行動は民主主義にとって大切だと思ったんだ。でもこんな結果になるなんて」

 と、肩を落とす。彼は、今後予想される主要メディアに対する逆風も懸念する。

「報道の自由があるアメリカを、心から愛している。それを、アメリカ大統領から脅かされるかもしれないなんて、思ってもみなかった」

●敵視の大手紙は読者増

 トランプ氏は選挙戦中、集会で毎日のように「最も不正直」「嘘つき」とこき下ろしていた主要メディアへの攻撃を、当選しても緩めていない。

「ワオ、ニューヨーク・タイムズは、哀れむべき、とんでもなく不正確な『トランプ現象』の報道のせいで、何千人もの購読者を失っているぞ」(13日ツイート)

「ニューヨーク・タイムズは、私についてのひどい報道で、購読者に詫び状を送った」(同日ツイート)

 ニューヨーク・タイムズはこれに対し、17日にプレスリリースを出し、投開票から1週間で、4万1千人の新規購読者(紙とデジタル)を得たと発表した。1週間での伸びとしては、2011年以来という。マーク・トンプソン最高経営責任者(CEO)は、トランプ氏を名指しで批判はしなかったが、こう述べた。

「編集局は、選挙戦中飛び抜けたいい仕事をした。それが、過去最高のオーディエンスと何万人もの新規購読者を得る結果になった──これは市民がいかに、高品質で、深く掘り下げ、独立しているジャーナリズムを求めているかという証拠だ」

 トランプ氏と主要メディアの対立は、ホワイトハウスに舞台を移し、第2幕が上がるのは確実だ。(ジャーナリスト・津山恵子/ニューヨーク)

AERA 2016年11月28日号