
民主主義の脅威と絶望する人あれば、会えて喜色満面の人あり。市場はひとまず株高・ドル高だ。トランプ次期米大統領を迎え、政治も経済も乱高下の時代へ──。
「会いたい」「絶望している」「話ができない?」「今晩空いてる?」
こんなメッセージが、この原稿を書いている17日現在もスマホに飛び込んでくる。デモを呼びかけるメールも次々に来る。米国内でクリントン氏を支持した誰もが、選挙結果を消化し、分析し、乗り越えようと必死だ。が、“トランプショック”が大きすぎて、前に進めずにいる。
ニューヨークを始め大都市で、投開票から6日間連続で「トランプは私たちの大統領じゃない」と叫ぶ人々がデモを展開。西部カリフォルニア州オークランドでは、デモ参加者が警察と衝突し、店舗の窓ガラスが壊される騒ぎにまで発展した。
トランプ氏支持の女性ライターは言う。
「あれは、クリントン陣営が、選挙権のない17歳の子にお金を渡して、デモに見せかけているのよ」
一方、人種問題などに取り組む南部貧困法律センターによると、投開票翌日から5日間で、全米で437件の「ヘイト」と思われる脅迫や嫌がらせが発生、アフリカ系などの移民やイスラム教徒、さらに女性に対するものも。学校では、ヒスパニック系の子どもが「強制送還」されると脅されたりしている。
しかし、トランプ氏の息子ドナルド・トランプ・ジュニア氏は、ヘイト犯罪に関するニュースは、主要メディアが捏造している可能性があると示唆した。
●対メディア戦は第2幕
世界最大の人種のるつぼであるニューヨークのビル・デブラシオ市長(民主党)は、混乱を収めるのに必死だ。
「不安になっているニューヨーカー、聞いてくれ。確信を持ってくれ。私たちは、市が持てるすべての力を使って、あなたたちの権利を守る。私たちは、あなたたちの味方だ」
スティーブ・グリーンバーグ氏は、ネットワークテレビ局NBCのハイテク担当記者でクリントン氏支持者の50代男性だ。訓練を受けて、投票所でマイノリティーに対する差別が行われないか監視するボランティアをフロリダ州で務めた。