「当時の医学教育に携わる関係者からは、『こんなにやっている女子医大ですら、部分的適合、不適合があるのか……』と驚きの声がありました。本学の外部評価を参考に、日本医学教育学会がWFMEのグローバルスタンダードに準拠する評価基準の日本版を作成しました」(大久保教授)

●卒業生の社会貢献度

 評価基準の評価領域は、医科大学の使命と学修成果、教育プログラム、学生の評価、教員などの9領域。15年12月には、日本医学教育評価機構(JACME)が発足した。

 JACME理事を務める東京医科歯科大学の奈良信雄特命教授は、こう説明する。

「今後、23年までに全医学部がJACMEの評価を受ける予定です。これにより、グローバルスタンダードに合わせた教育が各大学で進むと期待されます」

 東京女子医科大学では、評価基準の改訂に伴い、カリキュラムも変化させている。臨床実習期間がさらに増加し、前回評価の課題を改善することで、医学教育がより充実したものとなる。

 東京慈恵会医科大学も14年に外部評価を受けた。前出の宇都宮教授は語る。

「建学の精神である『病気を診ずして病人を診よ』に則った医学教育とカリキュラムが高く評価されました。一方で、卒業生の業績を調べ、分析をしているかという評価項目は、これまで手付かずでした。今後は、卒業生の社会貢献についても調査分析をする予定です」

 各大学が、グローバルスタンダードに合致する教育に取り組めば、将来医師になる学生にとっても、その医師に診てもらう患者にとっても喜ばしいことだ。「2023年問題」は、日本の医学教育や医療の質向上のきっかけとなるだろう。(ライター・庄村敦子)

AERA 2016年10月3日号