周辺ではアッシジで1997年、ラクイラで2009年に大地震が発生したが、アマトリーチェ周辺は大きな被害を受けず、町全体の耐震化はなかなか進まなかったようだ。パビア大学のパオロ・バズッロ教授(耐震建築)は「地震で破壊された町の再建に資金を得るのは簡単だが、地震がなかった場所では難しい」と話した。ただ、耐震工事をした学校も半壊しており、不正が行われた疑いで検察当局が捜査に乗り出している。

●1皿で200円支援

 前出のアマトリチャーナは、日本でもおなじみのパスタ料理だ。グアンチャーレ(豚ほお肉の塩漬け)を使ったトマトソースと、すり下ろしたペコリーノ・ロマーノ(羊のチーズ)をスパゲティに絡めるのが本場流。

 そのアマトリチャーナを食べて被災地を支援しようという運動が、イタリア内外で広がっている。フェイスブックで呼びかけたのはローマ在住のグラフィックデザイナー。1皿注文があるごとに、店と客が1ユーロ(約115円)ずつを赤十字などの被災地支援に寄付する。イタリア発祥のスローフード協会が世界のレストランに協力を求めた。

 同協会によると、1週間足らずの間に欧州だけでなく、ブラジルやタイ、中国など各国の約900店が参加を表明。日本の店も多数賛同している。

 高齢化が進む町は、自然と地元特産品を生かした「アグリツーリズモ」で町おこしをしてきた。アマトリチャーナ祭りもその一つ。古い建物が大切に残され、雄大な自然を背景にした景観そのものを文化財として誇ってきたアマトリーチェの復興も、名物料理がカギを握っている。(朝日新聞ローマ支局長・山尾有紀恵)

AERA 2016年9月12日号