首都圏の地下では、このエリアが載っている陸側のプレートの下に、フィリピン海プレートが1年間に約5センチずつ沈み込んでいる。その二つの境界にたまったひずみが一気にずれ動いて生じるのが、大正関東地震、元禄関東地震などのM8級の大地震だ。

 さらにフィリピン海プレートの内側や、フィリピン海プレートとその下に沈み込む太平洋プレートとの境界、太平洋プレート内部などではM7級の地震が起きる。関東が世界的に見ても地震がとても多いのは、この複雑な地下構造のためである。

 M7級の地震は、大正関東地震以降では1987年に千葉県東方沖地震(死者2人)が起きただけだ。その今後の発生確率について、地震本部は「30年以内に70%」と発表。驚愕の数字として受け止められた。

 東京大学地震研究所の平田直教授らの研究チームは、2007年から首都圏直下のプレートの様子を詳しく観測している。首都圏の小中学校の校庭などに20メートルの観測用の穴を掘り、地震計を設置。それまでは都内に4、5カ所しかなかった観測点を一気に約300カ所に増やし、医療で使われるCT(コンピューター断層撮影)と同じ原理で、地下の様子を断層撮影するように探る。首都圏地震観測網(メソネット)だ。

●「M9」の影響は未知

 その結果、これまで考えられていたより、フィリピン海プレートが潜り込んでいる深さが浅いことなどがわかった。揺れの予測を正確にするために重要なデータだ。しかし、M7級の地震がどこで、どんな深さで起きるか、どんなメカニズムで起きるか、地震発生の仕組みを解明するためのモデルづくりは「これからの課題」と平田教授。

 11年の「M9」地震の影響で、東北地方には大きな地殻変動が引き起こされたが、それは関東地方には影響するのか。はっきりとしたことは、現在の地震学のレベルでは言えないという。

 では「M7級が30年以内に70%」は、どうやって出てきた数字だろう。これは、主に古文書の記録をもとに、元禄関東地震と大正関東地震の間の220年間に、平均27.5年に1回の頻度で計8回、M7級が発生したことからきている。統計的な根拠にもとづくもので、大正関東地震のころから90年以上経っているのに、科学的なレベルはあまり進んでいない。

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