昨年の自民党総裁選の時のことを思い出す。出馬を模索した野田聖子氏は推薦人を集められず、断念に追い込まれた。その時、民主党(当時)内からは「自民党は不自由な政党だな」という声がもれた。

 でも、もし今回無投票という事態になったら、人のことはとても言えない。

 仮に蓮舫氏が代表に決まったとしても、焦点はもう一つある。それは、ナンバー2の幹事長人事だ。

 党の顔として表舞台に立つ蓮舫氏をサポートしつつ、党勢立て直しの実務を担わなければならない。キャスター出身の蓮舫氏は華やかで説明能力も高く、追及力もあるが、リーダーとしての力量は未知数だ。それを陰に日なたに助けつつ、党を切り盛りするのが幹事長。

「彼女を傀儡として使い、実権を握ろうとするようではダメ。いわば、大きな手のひらに蓮舫をのせつつも、彼女をたてて、従いつつ実力を発揮するイメージ」(同党ベテラン議員)

 そんな力量のある議員が、どれだけいるだろうか。

 目を与党に転じれば、安倍晋三首相は今回の組閣で、防衛相に腹心の稲田朋美氏を起用した。その人事には批判もあるが、はっきりしているのは、稲田氏を未来の首相候補(それも女性初の)として、中長期的に育てていこうという意思だ。

 困ったときの蓮舫頼みとばかりに、場当たり的に都合よく彼女の人気に頼ろうとするようでは、民進党に未来はない、と言い切っていいだろう。

 民進党代表選の告示まではまだあと1カ月近くある。これから党内でいろいろと動きも出てくる、はず。出てこなかったら、これまたこの党の未来は……なのだ。(朝日新聞編集委員・秋山訓子)

AERA 2016年8月15日号