教育実習で人気者

 フェイスブックやツイッターに入れ墨や仲間と酔っ払ってはしゃぐ写真などを自慢げにさらし、予告通り凶行に及んだ植松容疑者は、意外にも自宅周辺での評判は悪くない。小学校教諭の父と、母との間のひとりっ子として育ち、ハキハキと挨拶のできる明るい子どもで、徒歩20分ほどかかる小学校へは集団登校で6年生時にはリーダーとして引率していた。私立大学在学中に母校の小学校で教育実習した際も、人気者だったという。近所の70代の男性は言う。

「その小学校は1学年1クラスしかなくて、彼は3年生を受け持って、ウチの孫がいたんです。孫は『休み時間に僕たちのやりたいことを一緒に遊んでくれる』と喜んでいました。彼は放課後も近所の子どもを集めて『先生』と呼ばれて嬉しそうに遊んでました。父親は勤め先が東京・八王子の小学校で、始発の5時半過ぎのバスで出勤するところをよく見かけましたね」

 植松容疑者は小学校の教員免許は取得したものの、採用はされなかった。

「大学卒業後はしばらく、清涼飲料水の自動販売機の入れ替えの仕事をしていて『給料安くてヤバいですよ』なんて言ってたね。父親は駅で顔合わせても挨拶しないで目を背けるような人だったけど、彼は笑顔の絶えない好青年だった。家の前の道路にゴザを敷いて上半身裸で日光浴してたから、背中の入れ墨にも気づいてたけど、周囲を威嚇するようなこともなかったしね。最後に顔合わせたのは事件の4日ぐらい前の朝。車で出かけるときに目が合って、いつも通りニッコリ『おはようございます』。てっきり、やまゆり園でずっと働いていると思ってましたよ」(別の近所の男性)

●近所に告げず親転居

 しかし、植松家の中では随分前から異変は起きていた。4年ほど前、ひとり息子を2階建ての建売住宅に残したまま、両親は八王子市内のマンションに転居したのだ。母親が野良を餌付けしていたことで近隣トラブルとなり、居づらくなって出て行ったという説や、息子と折り合いが悪くなったという説などいろいろあるが、いずれにしても近所の誰にも転居の理由は伝えていない。

次のページ