
「ファスナーは未来を開ける」
YKK ファスニング事業本部 事業推進部 汎用資材戦略推進室 TFM(車両部材)グループ 戦略アイテムチーム
チームリーダー 原田勝弘 (40)
撮影/写真部・東川哲也
アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はYKKの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■YKK ファスニング事業本部 事業推進部 汎用資材戦略推進室 TFM(車両部材)グループ 戦略アイテムチーム チームリーダー 原田勝弘 (40)
いつも何げなく座っている自動車のシートカバーに、ファスナーがついていることをご存じだろうか。開閉が目的ではない。シートを組み立てる時に効率よくカバーをかぶせることを目的とした専用ファスナーなので、カバーの裏などにひっそりある。
「目立たない構造になっているが、『こんなところにも使われている』と、もっと多くの人に知ってほしい」と語る原田勝弘は、ファスナーやボタンなど、車両用ファスニング部材のグローバル商品戦略を立てる責任者だ。
国内外の自動車シートメーカーが顧客だが国内メーカーであっても海外で縫製されていることもあり、世界を舞台に仕事をする。ひと頃は中国が多かったが、最近は東南アジアでの縫製が増えてきた。
ネックになるのは、やはりコミュニケーションだ。電話やメールでどんなにこまめに連絡を取り合ったつもりでも、日本と現地で話が微妙に食い違うと、ちょっとしたトラブルにつながることがある。
そういうときは、テレビ会議の出番だ。「やはりリアルタイムで互いの顔を見て話し合うことが大切。今朝も、YKKグループの海外拠点と情報をすり合わせてきました」
青山学院大学経営学部を1999年に卒業後、YKKに入社。台湾やドイツへの赴任経験が、今の仕事の支えにもなっている。ドイツでは車両用部材を新規事業として立ち上げた。担当した欧州自動車メーカーの車を日本の街中で見かけると、今でもそのときの喜びと苦労が昨日のことのようによみがえる。
漁網、耐火スクリーン、明石海峡大橋の排水溝……。ファスナーは時代時代、思わぬところへと用途を広げてきた。
「今後、自動運転車などで車の構造が変われば、今のようなシートではなくなるかもしれない。そのときどういう商品で貢献できるか常に新しいことを考えていきたい」
いつも、可能性の窓を開けることを考え続けている。
(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・安楽由紀子)
※AERA 2016年4月11日号