「パーテーションと足元には人感センサーがついていて、人が席にいるかどうかを判断する。スイッチを入れたまま離席した場合、10分たつと自動的に電源が切れます」(共同開発した高砂熱学工業の平原美博さん)

 オフィス全体では、“天井輻射空調”を採用。机と同じく天井パネルのホースに水が流れ部屋全体を冷やす。風を吹きつけないので、特に女性から「過ごしやすい」と好評だという。

 快適なだけではない。

「空調機から空気を送るよりも、水を流すほうが電力はかからない」

 と澤部さんが言うように、省エネ性が高いのも特徴で、従来のオフィス空調に比べると、消費電力を約40%削減することができる計算だ。

●満足感が全然違う

 天井に蛍光灯はついていない。パーテーション上部のLED間接照明が基本で、あとは個別のライトを必要に応じて使う。普通のオフィスより少し暗い印象はあるが、パソコンの画面はそもそもバックライトで明るく、作業にはまったく問題なさそうだ。照明の発熱が減れば、さらに冷房の効率が上がる。

 普及の壁となるのは、初期費用だ。大がかりなシステムのためビルの新築時に導入するのが基本となるうえ、従来の空調と比べれば初期費用はかかる。

 前出の早稲田大学の田辺新一教授は、個別に空調を管理できることの心理的な効果についてこう説明する。

「個人で調節できれば、満足感が全然違う。扇風機の風もやみくもに他人に当てられると腹がたつけど、自分で選択した結果なら強風でも受容できるんです」

 オフィスの制“空気”権を個別に持てる時代へ。女性や外国人が多く働くようになってきたからこそ、ダイバーシティーに対応する空調のあり方を考えないといけない。(編集部・高橋有紀)

AERA 2016年8月1日号