手前の机に電源を入れた状態。奥の机に比べて温度が低く、パネルに水が流れている机の作業面とパーテーションは、特に青が濃くなっているのがわかる(撮影/高橋有紀)
手前の机に電源を入れた状態。奥の机に比べて温度が低く、パネルに水が流れている机の作業面とパーテーションは、特に青が濃くなっているのがわかる(撮影/高橋有紀)
左上に、パネルやファンのスイッチがあり、個人で調節できる。パーテーション上部の黒い窓が、人感センサー(撮影/高橋有紀)
左上に、パネルやファンのスイッチがあり、個人で調節できる。パーテーション上部の黒い窓が、人感センサー(撮影/高橋有紀)

 適温には個人差があるため、フロア全体を一律に冷やすと、なにかと問題だ。そんな中、デスク単位で温度調整ができるパーソナル空調が登場した。

 夏の「適温」問題は悩ましい。

 暑がり、寒がり。外回りの仕事、一日中室内にいる仕事。TシャツOKの職種と、ジャケット必須の職種。さまざまな人が働く空間だからこそ、28度にしても、26度にしても、適温には個人差が発生する。みんなが快適、は夢物語なのか。

 そんな問題に立ち向かうべく、未来のオフィスの空調を先取りしている空間がある。東京・大手町の大手門タワー・JXビルの3×3LabFuture。ここで採り入れているのが、デスク単位で温度調節ができるパーソナル空調だ。

●空気よりも水を流す

 開発に携わった三菱地所の澤部光太郎さんが言う。

「高効率の省エネは、個別冷暖房です」

 個人単位の空間でこまめにオン・オフを切り替えることができれば、フロア全体を一律に冷やすよりも、エネルギー効率がよい。全体は最低限に抑え、個別で調節できれば、席にいない人や寒がりの人のスペースまで冷やす無駄がないからだ。

 これを実現したのが、冷暖房付きオフィスデスクだ。

 仕組みはこうだ。冷温水の通るホースをデスク内部と、向かいの机とを仕切るパーテーション部分に敷設する。16度に冷やされた水がホースを循環することで、じんわりと周辺を冷やす。

 デスクの表裏、つまり、作業面と膝上の面を、個別にスイッチでオン・オフできる。作業面をオンにすれば、パソコンで作業するときに、ちょうど手を置くエリアの辺りが、ひんやりとしてくる。

 まだ暑いと感じれば、ファンの電源を入れて冷風を出すこともできる。水で冷やされた空気が、21~22度で供給される。細かくあいた穴から出る風は周囲には拡散せず、ちょうど自分の手元に落ちるように流れてくる。

 机の厚さは普通の机と変わらず、前部のパーテーションも10センチほどの厚さだ。この厚さに収めるために試作を繰り返し、現在のものは4号機だという。

 冬は冷水が温水になり、デスクの裏からコタツのように暖める。

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