●寄付者が使途も決める

 年収が高く税金を多く納めているほど、認可保育園の保育料は傾斜で高くなるうえに入園はしづらくなるなど、負担感が大きいという母親にも多く出会った。格差が固定化し生活圏が分かれているため、貧困を身近に感じずピンとこないという声も多い。寄付先進国で知られる米国などとは宗教観も違う。寄付を拒む理由はいくらでもあるのだ。

 20年までに日本の寄付市場を10兆円にすることを目標に掲げ、NPOの活動支援を行う日本ファンドレイジング協会のコミュニケーション・ディレクター、三島理恵さんは言う。
「日本は“公共”は国がやるものだという意識が根強く、納税で社会への責任を果たしていると思っている人がほとんどです。でもそれだけでは社会がまわらなくなっているのが現実。一方でNPOも活動内容を寄付者に対してもっと明確に示す努力が必要です」

 そこで、寄付者が支援先NPOの活動にもコミットし、使途を一緒に決めているのが、ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京だ。パートナー(会員)は1人あたり毎年10万円を払い、社会貢献活動を行うNPOに出資するだけではなく、それぞれの専門知識をいかしてNPOの運営にも参加する。普段は弁護士・医師・経営コンサルタントなどの専門分野で働く会員たちが知識も提供するのだ。

 IT企業で働く男性(32)と国家公務員の女性(32)の夫妻も3年前から参加している。夫は13年の夏から約2年間、途上国の教育支援を行うNPO法人e-Educationの支援をしてきた。スタッフの新規採用に資金調達、特に専門のウェブサイトでのPRに力を入れた。

「このプロジェクトに関わるまで途上国について何も知らなかったのですごく刺激を受けました。支援する僕たちも成長機会をもらっていますね」

●意志のある使い道

 妻は福島県出身。母子家庭に育ち、高校卒業後コンビニでアルバイトをしながら受験勉強をし、東京の公立大学に進学した。半年ごとの審査をパスし、4年間授業料は全額免除に。途中からは、大学進学にともない上京してきた2歳年下の弟の生活の面倒もみるようになった。アルバイトを掛け持ちし、生活費を切り詰め、実家に帰省したのは4年間で1度きりだ。

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