重要文化財のクラーク記念館(撮影/藤岡みきこ)
重要文化財のクラーク記念館(撮影/藤岡みきこ)
神学部がある「神学館」の礼拝堂入り口には、ヘブライ語で旧約聖書の創世記第1章第1節から第5節までが刻まれている(撮影/藤岡みきこ)
神学部がある「神学館」の礼拝堂入り口には、ヘブライ語で旧約聖書の創世記第1章第1節から第5節までが刻まれている(撮影/藤岡みきこ)
礼拝堂入り口前を通り抜け、ステンドグラスが輝く礼拝堂へ(撮影/藤岡みきこ)
礼拝堂入り口前を通り抜け、ステンドグラスが輝く礼拝堂へ(撮影/藤岡みきこ)

【同志社大学 神学部】 紛争を解決に導ける人材を

 明治の教育者、新島襄がキリスト教主義、自由主義、国際主義を掲げて1875年に創立した関西私立の雄、同志社大学。神学部は、この大学の歴史そのものだ。

 法学部や経済学部が3千人を超える学生を抱えるのに比べ、全学年合わせても284人と学内で最も小さな学部だが、昨今、その存在感は増している。

「紛争やテロが多発する現代。国際情勢を正しく理解したい、そのために宗教を学びたいという学生が増えました」

 と話すのは、石川立学部長(聖書神学)だ。親が牧師だったり、実家が教会だったりする学生は、ごく一部にすぎない。

「日本では『宗教』はとても狭い分野の学問だと思われがちです。しかし、宗教を学ぶことは自らとは異なる価値観を学ぶこと。国際感覚を磨くことに通じます。実学ではありませんが、とても重要な学びだと認知されはじめています」(石川学部長)

 国内にキリスト教系の大学は数多あるが、神学部を置く総合大学は同志社に加え、上智(東京都千代田区)、関西学院(兵庫県西宮市)、西南学院(福岡市)のわずか4大学。他は廃止されたか、学科として存続しているだけの場合が多い。

●3大一神教を学べる

 さらに、ユダヤ、キリスト、イスラムの3大一神教すべてについて専任教員を置いているのは、国内では同志社だけ。総合的に「神学」を学べる日本で唯一の大学なのだ。

 実は同志社の神学部も、かつてはキリスト教のみを研究対象としていた。転機となったのは、2001年9月11日の米同時多発テロだ。

「非常にショッキングな出来事。イスラムはどうなっているのか、と唖然(あぜん)としました」(石川学部長)

 宗教と宗教の間にある問題こそ学ぶべきことだ、という声が学部内から上がり、新たな教授陣の招聘(しょうへい)を決定。03年度、現在の3大一神教すべてを学ぶカリキュラムがスタートしたという。

 ユダヤ学を教えるアダ・タガー・コヘン教授は04年に着任。イスラエルのエルサレム出身で、授業にはヘブライ語が飛び交う。言語を学び、原文で聖書を読むと、当時の人間の息遣いに触れるように、生き生きとした情景が描けるという。

 コヘン教授は言う。

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