ネスレ日本社長兼CEO高岡浩三たかおか・こうぞう/1960年生まれ。83年神戸大学経営学部卒業後、ネスレ日本入社。88年ネスレUSA。30歳で最年少の部長に。2005年ネスレコンフェクショナリー社長。10年、生え抜きの日本人として初めて代表取締役社長兼CEOに就任(撮影/今村拓馬)
ネスレ日本社長兼CEO
高岡浩三

たかおか・こうぞう/1960年生まれ。83年神戸大学経営学部卒業後、ネスレ日本入社。88年ネスレUSA。30歳で最年少の部長に。2005年ネスレコンフェクショナリー社長。10年、生え抜きの日本人として初めて代表取締役社長兼CEOに就任(撮影/今村拓馬)

 普通、マーケティングというと「=市場調査」と考えるが、ネスレ日本社長兼CEOの高岡浩三氏の場合は違う。独自の哲学が、新たなビジネスモデルを生んできた。

 コーヒーマシン自体は無償で貸与される。そのマシンを管理し、専用カートリッジを定期的に購入したり代金を回収したりする「ネスカフェアンバサダー」は、実はネスレの社員ではない。マシンが置かれたオフィスで働く人だ。

 無報酬にもかかわらず、全国に23万人。いまも増え続けているのは、メールがコミュニケーションの中心となったオフィスで、1杯約20円のコーヒーから会話が生まれることが理由だ。

 アンバサダーがいるのはオフィスだけではない。人口減と高齢化が進む青森県では、薬剤師会が高齢者が集まる場をつくるために、アンバサダー導入を推進している。インテリアにもなりそうなスマートなコーヒーマシンが、社会問題の解決に一役買っているのだ。

 高岡は、このような「顧客が意識していない潜在的な課題の解決」をイノベーションと定義。ネスレ日本の21世紀型のマーケティング経営の柱と位置づける。昨年スタートした「食」「運動」「脳エクササイズ」を組み合わせた高齢者向けプログラム「ウェルネスクラブ」は、インターネットで利用者の健康管理をサポートする。グローバルネスレを挙げて注目されるビジネスモデルだ。

 グローバルネスレ33 万9千人の社員のうち、197カ国にある支社の経営ポジションに任命されるのは海外を転戦する数百人の「インターナショナルスタッフ」のみ。1983年にネスレ日本に入社以来、主に国内で勤務してきた高岡のネスレ日本社長就任は異例の人事である。

「正しいことをするのがマーケティング。そしてマーケティングとは、問題解決能力」

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