これに対し報告書は「それだけではリスクを相当程度減少させたとは言い難い」と指摘した。

 銀行出身の役員は、本社ではなく「アジア統括法人での決裁で完了させてほしい」と求めた。これに対しても報告書は、「経営陣は、責任が上位者に波及するのを避けるべく部下や下位組織に決裁責任を取らせるといった責任逃れの態度は厳に慎むべきである」と批判した。

 報告書はコンサルの「素性の不審な点」も指摘。業務でフリーメールのアドレスを使っていたほか、会社の所在地とされる場所が今は存在しない寮となっていた点を挙げて「コンプライアンス上問題がある」とした。

 コンサル側が調査に応じなったこともあり、報告書では「疑いを完全に払拭できないものの、贈賄行為があったとの認定には至っていない」と結論づけた。しかし、こうお灸をすえた。

「経営陣として、不正の存在が疑われる端緒を把握した際、どのように対応すべきかという点について研修が必要である」

(朝日新聞編集委員・奥山俊宏)

AERA  2016年3月28日号より抜粋