――後悔した人事案件はありますか?

ベンチャー 未来をつくる人材を育てることが人事の役割だと思っています。なのに、その道筋を示してあげることができず、いきなり辞められた時は「うわっ、やっちゃった」と思います。最近はないですけど、サプライズ退職は人事の恥です。

金融 チャレンジさせようと異動させた部署で、期待した成果を上げなかったときでしょうか。だけど、社員は「人財」。その財を守る役割を人事が担っているのに、成果を上げなかったからといって、「失敗しちまったぁ」なんて、口が裂けても言えない。その社員の長いキャリアを考えたとき、必要な経験を積ませることができたんだ、と考えるようにしています。

――人事部は、社内からどう見られていると思いますか。

メーカー 「伏魔殿」というか、会社のネガティブなところをやっている部署、と思われているでしょう。

外資 評価、低いです。面倒くさいことを持ってくる部署と思われているんですね。例えば、ISO(国際標準化機構)規格を知っていたほうが仕事がうまくいくと思い研修会を開く通知をすると、「すごい迷惑なんですけど」って、メールが来ることもあります。社員のためを思ってやっているのに、そう言われたりすると、結構つらいですね。

●「半沢直樹」は過去の話

――「人事は好き嫌いで決まる」とも言われます。心当たりは?

ベンチャー まったくないです。相性は見ますけど、好き嫌いで選ぶことはしません。そもそも、私たちのような社員100人にも満たない規模の会社でそれをやったら、相当ひずみが出ます。

メーカー 好き嫌い的要素があるのは否定しないけど、少なくとも、おべっかばかり使っているから昇進するという、そういう単純なものじゃないでしょう。あるとすれば、よほど余裕のある会社。私たちは、一番に仕事ができるのは誰かと考えます。

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