史上初めて長期金利がマイナスになった2月9日、日経平均株価も900円以上の下げ幅を記録。市場が悲鳴を上げているのか (c)朝日新聞社
史上初めて長期金利がマイナスになった2月9日、日経平均株価も900円以上の下げ幅を記録。市場が悲鳴を上げているのか (c)朝日新聞社

 日本銀行が繰り出した「奇手」、マイナス金利。直後こそ効果を見せたが、時を経るごとに副作用が目立ち始めた。

 円安誘導のはずだったマイナス金利政策が急激な円高を招いた。日経平均株価も急落し、2月12日には、1年4カ月ぶりに1万5000円を割り込んだ。長期金利も急降下し、2月9日には史上初めてマイナスに。満期まで国債を持っていると損をするという異常事態だ。金融市場は大混乱に陥った。

「新型窓口販売方式による10年利付国債(第341回)は、金利低下等のため、募集を行わないことといたします」

 2月3日、財務省のホームページに国債募集見送りを告げるお知らせが載った。

「長期金利が一斉に下がり、出せば利率はマイナス。発行不能と判断しました」と国債業務課の担当者は苦しげに言う。

 大手行は軒並み、定期預金の金利を引き下げた。0.025%といえば、100万円預けても利子は250円。

「銀行経営は間違いなく苦しくなる。預金金利を下げたぐらいで帳尻は合いません」

 メガバンクの幹部は言う。もっと苦しいのが地方の金融機関だ。優良貸し先が少なく、集めた預金を国債などで運用してきたが、長期金利の低下で人件費などを賄う利ザヤが確保できない。銀行業界では、無料が当たり前だった預金口座に管理手数料を取るなど、利用者へのコスト転嫁が検討されている。

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