施工した三谷セキサンが、市営住宅の杭工事で作業を統括する現場代理人を務めた2人、公民館を担当した1人に事情を聴いたところ、「間違いない」と認めた。印字されたデータの紛失や取得ミスが動機だった。

「データがとれなかった場合はすぐに元請けの管理者を呼んで、適切な施工が行われたことを現場で確認してもらうよう、マニュアルに加えました。データがとれた場合はすぐに用紙を写真に撮って、流用を防ぎます」(三谷セキサン広報担当者)

 しかし、同社が点検対象としている工事は過去5年分の8千件。施工主や元請けから要請のあった工事を優先的に調査し、終わったのはほんの一部だ。データ偽装が、ささいなミスや不可抗力がきっかけで行われているとしたら、その闇はこれからいっそう広がる可能性がある。

 そのあおりで、2~3年後に「杭偽装関連倒産」が急増するかもしれない、と心配するのは、帝国データバンク東京支社の藤森徹情報部長だ。

「2005年の耐震強度偽装事件と同じことが起きるのではないか、と強く思わされます」

 耐震偽装では、再発防止のために07年6月、建築確認と審査を厳格化した改正建築基準法が施行されたことを引き金に、建設業者の倒産が急増した。建物の着工から完成までの期間が延びて中小業者の資金繰りが悪化したためで、同社の調べでは、施行の影響による倒産は3年間で430件に達したという。

AERA  2015年12月14日号より抜粋