杭工事で電流計のデータ流用が明らかになり、会見で謝罪する三谷セキサンの三谷進治所長(左)ら (c)朝日新聞社
杭工事で電流計のデータ流用が明らかになり、会見で謝罪する三谷セキサンの三谷進治所長(左)ら (c)朝日新聞社

 拡大の様相を見せる杭工事のデータ偽装。規制強化の必要性も叫ばれるなか、業界が10年前と同じ道をたどる可能性がある。

 事態の深刻さを示すように、眉間に深いしわが刻まれていた。

「データ流用が起きた原因については、流用は想定しておらず、工事責任者によるチェック項目に入っておりませんでした」
 
 11月26日。工場で造るコンクリート杭の最大手、三谷セキサンの三谷進治社長が、本社のある福井市内で記者会見し、頭を下げた。福井県越前市内の小学校の体育館工事で、杭の電流計データを別の杭に流用していた。手元のメモを読み上げた後、顔を上げた三谷氏の視線は定まっていなかった。

 横浜の傾いたマンションでデータ流用が明らかになって以降、過去の杭工事の点検作業に追われる業界。偽装の実態が明らかになりつつある。

 冒頭の会見の翌日、業界41社でつくるコンクリートパイル建設技術協会は、偽装を行ったのが7社に拡大したと発表した。横浜のマンション工事を担った旭化成建材(東京)、業界2位のジャパンパイル(同)、冒頭の三谷セキサンに加え、日本コンクリート工業(同)、前田製管(山形)、中部高圧コンクリート(三重)、NC貝原コンクリート(岡山)といった顔ぶれだ。協会に加盟する各社は、過去の杭工事が適切に行われたか、2万件余りの記録を調べている。

 早くもうみが出た。12月2日、福井市が、市営住宅と公民館の杭合計12本でデータの流用があったと発表したのだ。

次のページ