「楽しい時代は終わったんだ」

 学び直しには、必ず通らなければならない関門がある。これまで築いたキャリアや価値観を否定される経験だ。その時、マインドセットできるかどうかが、試金石でもある。

 退職後、大石さんは年齢や性別に関係なくできる仕事を求め、行政書士の資格を取ることを決意した。客室乗務員は華やかなルックスと経験を生かして、マナー講師やキャリアコンサルタントに転身する人が多い。大石さんにもカルチャースクール講師の誘いがあったが断った。

「人生やり直すとしたら今。地に足をつけて生活するために、勉強しないといけない時期だ」

 大石さんは、フェリス女学院短期大学(当時)の家政科卒。法律の知識は全く持ち合わせていなかった。独学では難しいと判断し、専門学校に通って猛勉強した。退職から1年後の試験で、合格率が8%の難関を突破した。

 現在は都内に個人事務所を構える。ビザ発給のための書類など、外国人からの口コミの依頼が絶えず、「自分を選んでくれた」という充実感がある。

「今は客室乗務員に戻りたいとは思いません」

AERA 2015年6月29日号より抜粋