ひとりだからこそ、脱げる鎧もあるようだ。東京・虎ノ門ヒルズの目の前にある、求人サイト「日本仕事百貨」が運営する「しごとバー」。起業家、数学教師、蓄音機演奏家など、さまざまな職種の人がバーテンダーとなり、自分の仕事について、客と語り合う。
訪ねたのは「萩ナイト」と銘打たれた日。山口県萩市でゲストハウスを営む塩満(しおみつ)直弘さんが、スクリーンに萩の城下町を映し出して魅力を力説。萩出身者、萩が舞台の大河ドラマ「花燃ゆ」にハマる女子など、20~60代まで約90人が集まった。そのほとんどが初対面のひとり同士だ。
「萩という共通のテーマがあるから、話しやすいと思って」
そう語るのは、萩への旅行経験がある飲食業の女性(27)だ。
会社のエリートコースから外れたことに鬱々としているという30代の女性は、皆がどんな気持ちで仕事と向き合っているのか知りたくて参加した。
建設会社の管理職として働く男性(59)は、若い部下とのコミュニケーションに悩んでいた。
「若い世代が何を考えているのか知りたくて来ました。ひとり同士、肩書抜きで本音で話せるのが、何よりの魅力ですね」
※AERA 2015年6月22日号より抜粋