日本ホテル「100年ホテルの男」東京ステーションホテル 料飲宴会部料飲支配人 山岡広記(41)撮影/写真部・外山俊樹
日本ホテル
「100年ホテルの男」

東京ステーションホテル 料飲宴会部
料飲支配人 山岡広記(41)
撮影/写真部・外山俊樹

 アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。

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 現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。

 あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。

 今回は日本ホテルの「ニッポンの課長」を紹介する。

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■日本ホテル 東京ステーションホテル 料飲宴会部 料飲支配人 山岡広記(41)

 東京駅は、鉄道交通の起点。そんな日本の中心地で、山岡広記は働く。といっても、鉄道員ではない。丸の内駅舎内にある「東京ステーションホテル」のホテルマンとして、直営4店舗を含む館内10の飲食店を束ねる。

 開業は1915年。空襲によって約5年間、休館したものの、100年続くホテルとして多くの人々が利用してきた。松本清張の長編推理小説『点と線』も、ここの一室から生まれている。国指定重要文化財である駅舎の保存・復原工事のため、2006年から6年半、休館。12年10月に新たな装いで営業を再開した。

 山岡は95年、運営会社の「日本ホテル」に入社した。長く東京・池袋のホテルメトロポリタンで働き、東京ステーションホテルには休館中から携わる。最初の仕事は営業再開へ向けた準備だ。

 フレンチの王道をいくレストラン、重厚でオーセンティックなバー……。直営店はそれぞれ長い歴史を持つ。そこで働くスタッフ約70人の多くは、新規採用組だ。

「ホテルで働くのは初めて、という人も珍しくありませんでしたが、生まれ変わるホテルでは、経験より熱意を重視しました」

 再開1年目は、予算を上回る大盛況。注文を受け、調理し、テーブルに運ぶまで、よどみのないチームプレーができているか、スタッフの動きに気を配った。

 人が相手の仕事だけにトラブルはつきもの。そんなとき、心がけたのは「ニュートラルな気持ち」だ。

「トラブルが起きたときこそ、サービスで挽回。好印象につなげるチャンスですから」

 数字の管理、スタッフのケア……。裏方の仕事が増えたが、もとはバーテンダーに憧れて、この世界に入った。

「暗がりに差した光のなか、シェーカーを振るバーテンダーがカッコよかった」

 一瞬の憧れが、長い仕事の始まりになった。(文中敬称略)

※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです

(編集部・岡本俊浩)

AERA 2015年2月23日号