ハミングバードテーブル田中淳子さん写真は2015年3月にオランダ大使館で開かれた経済産業省主催のパーティー。田中さんが料理を考え大使館のシェフが作ったコラボ企画で、前年の実績が認められた。「今後は企画の仕事を増やしたい」と田中さん。ケータリング予算は1人3千円から(撮影/高井正彦)
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ハミングバードテーブル
田中淳子
さん
写真は2015年3月にオランダ大使館で開かれた経済産業省主催のパーティー。田中さんが料理を考え大使館のシェフが作ったコラボ企画で、前年の実績が認められた。「今後は企画の仕事を増やしたい」と田中さん。ケータリング予算は1人3千円から(撮影/高井正彦)
深沢キッチン横田渉さん(35)東京都世田谷区深沢のアトリエは、商店街の中の肉屋だった店舗を使用。今後は歴史ある地元商店街にもなにか貢献したい、と検討中の横田さん(撮影/高井正彦)
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深沢キッチン
横田渉
さん(35)
東京都世田谷区深沢のアトリエは、商店街の中の肉屋だった店舗を使用。今後は歴史ある地元商店街にもなにか貢献したい、と検討中の横田さん(撮影/高井正彦)
ケータリング予算は1人5千円かつ合計で5万円以上、別途ケータリング費1万円から(写真:本人提供)
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ケータリング予算は1人5千円かつ合計で5万円以上、別途ケータリング費1万円から(写真:本人提供)

 パーティー会場に料理を届けるケータリング。最近は細かいオーダーにまで応える、よりスペシャル感のあるものへと進化している。

 料理業界事情にくわしい料理写真家、今清水隆宏さんによると、創作性の高いケータリングは、1981年発足の「キュール」が先駆け。90年代以降、手作りウェディングの流行などで担い手が増え、3~4年前からフリーの料理人を含めた30代の若手が目立つようになった。「自分が好きな料理を作り、依頼主のパーソナルな要求に応えたい人が増えた」と最近の傾向を語る。

 東京都でケータリングサービス「ハミングバードテーブル」を運営する田中淳子さんは、料理の見せ方には徹底的にこだわる。
 
 14年2月に経済産業省が開いたセミナー後の交流会では、日本がテーマのセミナーに合わせて、石庭をイメージし波紋の形に料理を並べた。青のりをまぶした丸いおにぎりで苔むした岩を、さつま芋や紫芋のチップを落ち葉に見立てる。

「こんな表現は見たことがない」「これを食べられるだけで大阪から来た甲斐がある。めっちゃおいしい」などと喜ばれた。

「私が関わったパーティーでは、ほとんど料理が残らないんです」と田中さんはほほ笑む。

 プロの料理人からこの道に入ったのは、横田渉(わたる)さん(35)だ。

 大阪市の辻調理師専門学校に入ってフランス校に進み、レストランで研修して20歳で帰国。東京のフレンチレストランで5年間修業し、掃除からお客への気遣いまでたたき込まれた。

12年11月、ケータリングや料理イベント、メニュー開発などを行う会社、コンベイに所属するフリーの料理人になった。東京都世田谷区にあるアトリエ「深沢キッチン」を拠点にする。

 ケータリングの依頼主はイベントで知り合った個人が中心で、小さなパーティーが多いという。 女性4人グループが自宅で開いた誕生パーティーでは、甘いモノが苦手な人のために肉とマッシュポテト、トマトでケーキを作った。すると、「こんなケーキ、見たことがない」「まさか自宅でこんな贅沢なことができるとは」と喜ばれた。

「食べることは生きる根源。食べた人に喜んでもらえる場を提供したい」(横田さん)

 原点には、親戚が集まるたびに祭り寿司などを作り、料理とその楽しみ方を教えてくれた亡き祖母がいる。横田さんは、仕事がつらいと思ったことはあるが、料理をやめたいと思ったことは一度もないという。

AERA  2015年5月18日号より抜粋