だが、ベビーカーを持ち込む側にも“必然”がある。IT企業に勤務する横浜市のA子さん(35)は、最近まで1歳の息子を毎日、ラッシュ時の電車に乗せて通勤していた。自宅近くの認可保育園に入れず、“実績作り”のために会社近くの保育室に預けていたからだ。頭を下げながら、毎朝8時の満員電車にベビーカーで乗り込んだ。

「通勤しなければならないので、混んでいるから避けようという選択肢すらありませんでした。できたのは、なるべく女性専用車両に乗ることと、ベビーカーを降ろしやすいドア付近に立つことくらいです」(A子さん)

 昨年3月、国土交通省は電車やバスではベビーカーをたたまなくてもよいとする共通ルールを決めたが、それが乗客に共有されているとは言いがたい。国交省のルールに沿って、公共交通機関ではポスターなどで「ベビーカーはたたまなくてもOK」を強調するが、乗客の意識に変化はあったのか。

「まだ1年なので、意識が変わったかはわかりません。今後もベビーカーへの思いやりを醸成する施策はやっていく予定ですが、もう少し状況を見ていきたい」(JR東日本広報部)

 何とも心もとないのだ。本気で意識改革と改善を目指すのなら、海外を手本にしてもいい。

「ロンドンではバスなどでバギーの数が決まっている。その台数を超えると乗れない。それでうまくいっている」(65歳女性、専業主婦、埼玉県)

AERA 2015年4月20日号より抜粋