革の名刺入れを新調する。管理職になるから、以前より、いいものを選びたい。ここに入るのは、わたしの新しい名刺だ(撮影/写真部・堀内慶太郎、協力/K.ITOYA[東京・銀座])
革の名刺入れを新調する。管理職になるから、以前より、いいものを選びたい。ここに入るのは、わたしの新しい名刺だ(撮影/写真部・堀内慶太郎、協力/K.ITOYA[東京・銀座])

 この4月から新たに管理職になる人も多いだろう。マネジメントを始める時、必要な能力とは何なのか。実際に管理職についた人の話をもとに、考えてみよう。

 大手流通の広報の女性Bさん(40代)は、6年にわたって管理職を務めてきた。数多くの部下を預かってきたが、半年前に営業職から移ってきた、一人の女性部下(30代)に悩んでいる。仕事中にすぐ、泣いてしまうのだ。

 広報は初めての職場だから、ミスぐらいしょうがない。それなのに、電話を受けた担当者の名前を忘れた、仕事の段取りを間違えたなど、ほんの小さなつまずきで、トイレに駆けこんで泣いてしまう。目を真っ赤にして帰ってくると、職場の視線が集中する。

「これ、男性上司だったら絶対にアウトだと思うんです。職場で部下の女性に泣かれたら致命的じゃないですか」

 Bさんには部下に粘り強く寄り添うという信念がある。その部下とはサシで飲み、普段もよく観察する中で、見えてきたことがある。自己評価が著しく低いのだ。職場での涙は自信のなさゆえではないか。一人前にするために、Bさんは「自分のまねをさせよう」と考えている。

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