加藤:競争がないと十分な経済成長ができないことは、共産主義の実験が示しました。問題は、競争のルールやプロセス、また、競争の結果として生まれる格差を、人々がフェアで仕方ないと受け入れられるか。それによって許される格差のレベルが決まります。万国共通の「フェアなルール」はありません。ピケティ氏も言うように各国の民主主義プロセスで決めるしかない。

山形:格差そのものではなく、「どこまでか」が問題です。子どものかけっこで、隣の子と1秒違うだけなら「頑張ればいける」と競争心が起きるかもしれない。でも、(男子100メートルと200メートルの世界記録を持つ)ウサイン・ボルトを連れて来られて「頑張れ」と言われても、「それは無理だ」ということになるかもしれない。

 いずれにしても「競争に負けても家でご飯は食べられる」といった、ある程度のベースは必要です。日本の場合、そうした「底支え」が弱くなっていることが問題ではないでしょうか。競争しろと言われても、冒険しにくいのが現状だと思います。

AERA 2015年4月13日号より抜粋