デジタルペンを使って図形の証明問題に取り組む横浜国立大学教育人間科学部附属横浜中学校の生徒たち(写真:大日本印刷提供)
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デジタルペンを使って図形の証明問題に取り組む横浜国立大学教育人間科学部附属横浜中学校の生徒たち(写真:大日本印刷提供)
秘密は、ペン先についた超小型カメラ。それが専用の紙に印刷された特殊な配列のドットパターンを読み取り、動きを記録してパソコンなどに画像データとして保存する。こちらは「エコー・スマートペン」(撮影/写真部・加藤夏子)
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秘密は、ペン先についた超小型カメラ。それが専用の紙に印刷された特殊な配列のドットパターンを読み取り、動きを記録してパソコンなどに画像データとして保存する。こちらは「エコー・スマートペン」(撮影/写真部・加藤夏子)

 ノートに書いた文字が動き、しゃべりだす。そんな未来の世界にありそうな道具が、すでに活躍している。

「今日は朝練2日目です。つらいところだが元気を出そう!」

 とは言うものの、今は夜。声の主、ラグビー部顧問の先生はひとり自宅で、生徒に語りかけるようにしゃべりながら、デジタルペンで専用ノートに文章や図を書いている。内容は、練習の反省点や生徒へのエール、翌日の練習内容やその目的など。

 1ページ書いたところで、ペンをパソコンにつなぐと、ノートに書いた文字や図がそのまま画像で現れた。声も録音されている。これを、ラグビー部の生徒と共有しているネットのクラウドサービスにアップしておく。

 このファイルを、生徒たちが自宅のパソコンやスマートフォンで開くのは翌日の朝だ。その画像をクリックすると書いた順に文字色が変わり、声が再生される。それを聞いて、朝練に向かうのだ。

 こんなふうにデジタルペンを生徒とのミーティングに活用しているのは、宮城県仙台第三高等学校のラグビー部顧問・滝井隆太先生である。

「生徒が練習の目的を理解してグラウンドに出てくれば、1時間半の練習時間をフルに使える。私が練習に出られない日もフォローできるし、ミーティング時間が省けるのは大きい」 と滝井先生。生徒は、時間があるときに自分のデジタル機器で、何度も見直せる。先生にも生徒にも効率がいいようだ。

 デジタル時代を反映して、こうしたデジタルペンが各社から発売されている。専用ノートに書いた文字がそのままデータ化される機能に加えて、学研教育出版が販売するこの「エコー・スマートペン」は、録音機能を持つ。パソコンに取り込まなくても、専用ノートに印刷されたボタンや書いた文字をペン先でタップするだけで、音声の再生や停止ができるのだ。価格は2ギガバイトモデルで2万4千円とちょっと高め。だが、会議の議事録をとるのに便利だと、ビジネスパーソンにも愛用者が多いという。

AERA 2014年12月29日―2015年1月5日合併号より抜粋