「世界で一番好き」「お母さん、かわいい」と本気で言ってくれるのは息子だけ。いつか離れる日が来ても、愛さずにはいられない(立体イラスト/kucci、撮影/写真部・堀内慶太郎)
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「世界で一番好き」「お母さん、かわいい」と本気で言ってくれるのは息子だけ。いつか離れる日が来ても、愛さずにはいられない(立体イラスト/kucci、撮影/写真部・堀内慶太郎)

 常に息子のことを考えてしまう…これって恋愛? そう思ってしまうほどに、息子を持つ母親の愛は深いようだ。娘に向けるのとは異なる、息子への愛情とは。

 早朝の都内にある公園。サッカー合宿に向かう集合場所で、コーチに率いられた小学2年生の子どもたちが整列した。すると母親たちは、スマホや携帯電話で旅立つ息子を激写。

「これから3日間は、この画像を見て寂しさに耐えなくちゃ」

 渋谷区に住む専業主婦のAさん(39)がそう言うと、ママ友たちも、撮った写真を確認しながら呟く。

「この空白は、誰にも埋められないよね」

 息子は恋人で自分の最大の理解者。周囲のママたちも、みんな息子が大好きだ。唯一、気を使っているのは、子どもが女の子だけというママへの態度。

「第1子が娘なのでわかるんですが、女の子だけのママの中には、息子への愛情を“ただ甘やかしている”とか“気持ち悪い”というふうに受け止める人もいる。女の子より成長が遅いことや、異性に感じるキュンとした思いは、男の子ママだけが共有可能なんです」(Aさん)

 もちろん娘も大好きで愛おしいのだが、何かが違うのだ。

 中には露骨に「息子のほうがかわいい」と公言する母親もいる。小学4年生の息子を持つ、杉並区に住む会社経営の女性・Bさん(45)は、4歳の娘よりも息子がかわいくて仕方ないと周囲のママたちにも話している。娘もちゃんと育てているが、息子への愛が止められない。この夏、キャンプの前日にも息子は「ママと離れるのが嫌だ」と膝の上で大泣きした。

 優しく「そんなにママが好きなの?」と尋ねると、「ママが大好き」とさらに号泣され、スカートはベトベトに。

 泣き虫すぎて不安な気持ちもあるが、今はこれが大変な子育てへのご褒美だ。ちなみに単身赴任中の夫は存在感ゼロ。

 ただ最近、娘の様子が心配になってもいる。女友だちが子どもの頃「息子のほうがかわいいわ」と母親に言われ、今も弟をひいきした母親を恨んでいると聞いたからだ。娘が急に自分に甘えてくるようになったのは「愛情が兄に比べて足りないと感じているから?」とも思うように。以来、娘には“頑張って”愛情を注いでいる。

AERA 2014年9月15日号より抜粋