ボストン コンサルティンググループプリンシパル高部陽平さん(36)コンサルティングでは、相手のタイプを見極め、響く言葉を考え、相手自身の言葉を引き出す(撮影/編集部・木村恵子)
ボストン コンサルティンググループ
プリンシパル
高部陽平さん(36)

コンサルティングでは、相手のタイプを見極め、響く言葉を考え、相手自身の言葉を引き出す(撮影/編集部・木村恵子)

 職場や取引先との間で飛び交う言葉の応酬。みんなのやる気も成果も、実は言葉の力にかかっている。物事をプラスに回転させる魔法のセリフとは。

 世界的コンサルティングファーム、ボストン コンサルティング グループには、社内で飛び交うこんな言葉がある。

「それ、結晶化できてないよね?」

 プリンシパルの高部陽平さん(36)もよく使う。「これは十分結晶化できているだろうか」と自問自答することも多い。

 結晶化の意味は、相手の心を動かす言葉を練りに練って磨き上げるということ。議論や交渉において、結晶化した言葉でなければ、相手を納得させられないというのが社内の共通認識だ。

 たとえば、クライアント企業に人材育成の重要性を理解してほしいとする。単に「人材育成は大事だから時間をかけましょう」と言っても響かない、と高部さん。代わりに、「業績と人材育成は、企業の両輪とおっしゃっていましたね。営業成績の改善にかける時間と同じ時間を、人を育てるためにも使うべきではないでしょうか」と言う。相手の心に刺さる言葉、伝え方を考え抜くのだという。

 コンサルタントはクライアントと運命共同体になれるかどうかがカギ。そのために、高部さんは、経営者などと話すときに、まずは、「何を大切にして仕事をしてきましたか」「何に一番苦労されましたか」などと、質問する。表面的な肩書ではわからない、仕事をするうえでの価値観や姿勢を理解し、共有するためだ。話を聞きながらただうなずくだけではなく、自分なりの仮説をもって語り合うことで、一体感が生まれる。

AERA  2014年7月21日号より抜粋