日本でも増えている国際結婚。なかには、こんな格差婚もあるようだ。

 活動休止中の歌手・宇多田ヒカルが公式サイトで年下のイタリア人バーテンダーとの結婚を発表したのと同じ日。新宿・歌舞伎町の小さなクラブでは、ある日本人女性(43)とナイジェリア人男性(25)の結婚披露パーティーが開かれていた。女性にとっては「命」、男性にとっては日本にい続けるための「ビザ」が目的の結婚。女性は、静かに話し始めた。

「自分の決断を後悔していないし、捨てばちな気持ちでしたことでもありません」

 彼と出会ったのは、パーティーを開いたのと同じ歌舞伎町の路上だ。当時は不動産関係の営業職で、接待の酒席を抜け出して戸外で一服していた。週末の繁華街にはビラ配りの外国人が大勢立っていて、そのほとんどが黒人。彼らがアフリカからやってきた出稼ぎ労働者であることなど、全く知らなかった。

「寒いね、と声をかけた相手が彼でした」

 路上での立ち話に終わらなかったのは、彼の強引さと人なつこさに押されて、携帯電話の番号を教えてしまったからだ。

「私自身、面白がってたんでしょうね。仕事ばかりの日常に刺激が欲しい気持ちはあった。彼のほうはお金が欲しいのかなと思ったんですけど、ビザが欲しいとは思いもよらなかった」

 歌舞伎町で会ってから10日もたたないうちに、彼は「結婚して」と切り出した。

「2年間オーバーステイの状態で、このままだと強制送還されてしまう。結婚してビザを取らなければ、二度と会えない」とすがりついてきたという。

「笑っちゃいますよね。自分が日本にいたいだけでしょ、って。そう言い返したら『当たり前だ』と。こんな恵まれた国で働きたいと思って何が悪い。チャンスを欲しがって悪いのか、と真顔で言われました」

 その、明快さに負けた。前向きで恥じるところがない。チャンスを与えてくれるから、あなたのことが好きだと言う。ビジネスなら、至極当然の判断だ。

 女性のほうにも目的があった。子どもだ。30代後半に流産を経験してから考えないようにしてきたが、タイムリミットが近づきつつあった。

 いま、おなかには彼の子どもがいる。2人の関係が「ギブ・アンド・テイク」であることは自覚している。そのバランスが崩れたら終わってしまうということも。一方で、関係をマネジメントする主体はあくまで自分だという意識もある。自分には収入もあるし、住む場所もある。彼のビザが取れるかどうかも自分次第だ。だから、

「彼が離れていっても、失うのは心の支えだけ。そう割り切れば怖くありません。一生変わらないものなんてないじゃないですか。誰が何と言おうと、あたしは今の喜びを大切にしたい」

AERA 2014年7月14日号より抜粋