引き継いだ活版印刷機、活字のケース架とともに、左からオールライト工房の高田舞さん、もとのりさん、唯さんの3きょうだい。役割分担をしながら、通常の印刷依頼のほか、イベントやワークショップを手がけている(撮影/村上宗一郎)
引き継いだ活版印刷機、活字のケース架とともに、左からオールライト工房の高田舞さん、もとのりさん、唯さんの3きょうだい。役割分担をしながら、通常の印刷依頼のほか、イベントやワークショップを手がけている(撮影/村上宗一郎)
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 15世紀のドイツでグーテンベルクが開発した「活版印刷技術」。デジタル印刷が主流のいま、活版印刷を学ぶ若者が増えている。

 若い世代のグラフィックデザイナーたちが、新しい感覚で活版印刷を使う試みも始まっている。東京都大田区鵜(う)の木に工房を持つ「オールライト工房」は高田もとのりさん、唯さん、舞さんの3きょうだいが分業して活動している。めざすのは、ややハードルの高い活版印刷の現場とユーザーをつなぐ役割だ。

 そもそものきっかけは2007年に開催された「活版再生展」。同展は東京・世田谷文化生活情報センター・生活工房で開かれた、活躍中のグラフィックデザイナーやアーティストが参加する画期的なもの。その目的は、文字通り「活版印刷の再生」をめざし、クリエーターたちの作品を展示するだけではなかった。

「僕は宣伝美術を担当したのですが、その条件が『印刷機材一式を譲り受け、新しい提案型活版工房を始めること』だったんです」(高田唯さん)

 金属製の印刷機や鉛の活字、大きさも重量もある印刷機材を引き受けるには、場所選びも容易ではなかったという。それでも偶然や縁がかさなり、現在は印刷会社・金羊社の協力のもと、同社内に工房を持つに至った。

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