全国学校給食甲子園は4度の予選がある。全国大会への出場は栄養職員の憧れだ(写真部・慎芝賢)
全国学校給食甲子園は4度の予選がある。全国大会への出場は栄養職員の憧れだ(写真部・慎芝賢)
給食甲子園では栄養教諭・職員と調理師2人一組で1時間で調理から片付けまで。味、栄養価などが審査ポイントとなる(写真:全国学校給食甲子園提供/撮影:東島良英)
給食甲子園では栄養教諭・職員と調理師2人一組で1時間で調理から片付けまで。味、栄養価などが審査ポイントとなる(写真:全国学校給食甲子園提供/撮影:東島良英)
(写真:全国学校給食甲子園提供/撮影:東島良英)
(写真:全国学校給食甲子園提供/撮影:東島良英)
(写真:全国学校給食甲子園提供/撮影:東島良英)
(写真:全国学校給食甲子園提供/撮影:東島良英)
都内各地の地場食材の生産者を訪ねる青柳小の松丸さん。生産物への愛情と子どもへの愛情が交差する(撮影/写真部・山本友来)
都内各地の地場食材の生産者を訪ねる青柳小の松丸さん。生産物への愛情と子どもへの愛情が交差する(撮影/写真部・山本友来)
生産者の話や実践を授業でも伝えていく(撮影/写真部・山本友来)
生産者の話や実践を授業でも伝えていく(撮影/写真部・山本友来)

 学校給食が劇的に様変わりしている。昨年8回目を迎えた「全国学校給食甲子園」(昨年12月8日開催)には、全国から2266校(給食センター含む)が参加した。その盛況ぶりからも、各学校、各地域の給食や食育にかける熱が伝わってくる。

 8回大会の優勝者は、初めての男性栄養士、文京区立青柳小学校の松丸奨さん(調理師は大野雅代さん)。審査基準の一つには地産地消があるが、畑や生産者の少ない東京都(文京区)のメニューが初めて評価された。審査員の一人、馬場錬成氏は表彰式でこんな挨拶をした。

「男性の活躍といい東京校の優勝といい、給食新時代を実感する。ユネスコ世界無形文化遺産に登録された和食の原点には、学校給食も貢献している。日本のような給食システムは、世界一のすばらしい文化だ」

 青柳小チームのメニューのテーマは「東京地場産物で江戸の粋を味わう」。「のらぼうめし」「江戸前つくねの宝袋」「伝統つくだにあえ」「すり流し小鍋立て汁」「はちみつにんじんゼリー」「東京牛乳」。全てのメニューに、江戸東京野菜と呼ばれる伝統野菜が使用されていた。

 のらぼう菜は江戸時代に西多摩地方で作られ始めた、いまでは希少な食材だ。「江戸前つくね」には東京軍鶏肉、千住ネギ、東京大豆、七国峠の卵。ゼリーに使われた人参も馬込三寸人参。はちみつは練馬でとれたもので、仕上げには、金町小カブのミルクピューレがかけられる。

 江戸東京野菜は、農地や生産者の激減で現在はごく一部の農家でしか作られていない。病害にも弱いし流通量も少ないから、給食には不向きだ。ところが松丸さんは、「なんとか給食に使って子どもたちに故郷に対する愛情を持ってもらいたい」と、週末や長期休みを使って東京中の生産者を訪ね歩いた。

 馬込三寸人参やのらぼう菜を生産している小平市の生産者の畑を訪ねた日、松丸さんは食材を分けてもらう交渉を始める前に、畑仕事の手伝いから始めた。生産者と語り合う中で給食にかける熱意を理解してもらう。自分も畑仕事を通して江戸東京野菜のことを学ぶ。どの季節のどんな食材なら給食に必要な量が確保できるのか。どの食材でどんなメニューができそうか。生産者側も「そこまで熱心だったら」と、畑の一部を青柳小用に確保してくれることになった。

AERA  2014年2月10日号より抜粋