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インクを練りから始まる「活版印刷」 若い世代で再燃

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個人向け活版印刷機・アダナ―21Jを実際に使う参加者。ハガキ大の印刷物とはいえ、きれいに刷るのは難しい。もちろん刷り上がった作品には、活版ならではの存在感がある(撮影/村上宗一郎)

個人向け活版印刷機・アダナ―21Jを実際に使う参加者。ハガキ大の印刷物とはいえ、きれいに刷るのは難しい。もちろん刷り上がった作品には、活版ならではの存在感がある(撮影/村上宗一郎)

大石薫さんが立原道造の詩を活字で組み、印刷した作品。文字そのものの存在感が美しい。活版印刷は魅力的だが、技術や見た目だけでなく、どんな言葉を選び、刷るのかまでを含めて、「作品」になる(撮影/村上宗一郎)

大石薫さんが立原道造の詩を活字で組み、印刷した作品。文字そのものの存在感が美しい。活版印刷は魅力的だが、技術や見た目だけでなく、どんな言葉を選び、刷るのかまでを含めて、「作品」になる(撮影/村上宗一郎)

 街で手にするショップカードやイベントのフライヤーに、クラシックな活版印刷が増えている。テクスチャーのある紙に、ギュッと押した活字は、デジタル印刷にはない味わいだ。
 
 15世紀に初めて聖書が活版印刷で作られて以来、活版印刷は長らく印刷の中心にいた。日本でも「西洋式活版印刷」が幕末から明治初期に導入されてから、昭和の後半に至るまで印刷メディアの主役を務めた。

 だが昭和も後半になると写真植字が普及、オフセット印刷も登場し、手のかかる活版印刷は徐々に少なくなり、今やデジタル印刷が主流だ。その一方で、なぜ活版印刷を見かけるようになったのだろうか?

 実は若い世代のデザイナーや一般の女性たちに、活版印刷を楽しむ人が増えているのだ。

 一般向けに、実践的な活版印刷の講座を開催しているアダナ・プレス倶楽部(東京都新宿区、朗文堂内)を訪ねてみた。講座を指導する大石薫さんは印刷博物館(東京都文京区、トッパン小石川ビル)の印刷工房「印刷の家」に2000年のスタート時から携わったという経歴を持つ。

「農学部出身で、活版印刷はおろか写植さえ知らない世代なのですが、仕事として活版印刷を一から学ぶことになりました。やってみると身体性をともなう活版印刷に純粋な面白さ、愉(たのし)さを発見したんです」

 その後、大石さんはタイポグラフィの専門出版社・朗文堂代表の片塩二郎さんに出会い、個人向け活版印刷機アダナー21Jの新規製造と普及に関わることになる。アダナー21Jのターゲットはズバリ「女性」だ。その理由を片塩さんはこう語る。

「女性は自分が好きになったら、趣味でも極めようとしますよね。また手仕事を楽しむ人も多い。そこに言葉への関心、紙で残す楽しさが加わると、活版印刷への興味は必ず生まれると思いました」

 その日の講座に参加していたのは3人の女性とMacのオペレーターをしているという男性。年代はさまざまで、デザイン関係の仕事をする人も。実際に自分で活版を組み、インクを練って、印刷するところまでおこなう。

「パソコンだと、どんな変更でも一瞬でできてしまう。けれど活版では、たとえば空白を作るにも『込め物』という部品が必要で、すべてが質感を持っているのが新鮮です。普段の仕事でも余白に気を使うようになりました」(20代デザイナー)

 大石さんは「懐古的な見方ではなく、活版印刷ならではの可能性があるはず」と言う。

AERA  2014年2月17日号より抜粋


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