つい他人事と思いがちな、相続税の税務調査。しかし、その確率は所得税などの調査に比べてかなり高い。気になるのは調査対象がどのようにして選ばれているのかだが、実は「KSKシステム」というものによって選定されているらしい。

「相続税の税務調査が実施される割合は約30%。いずれも一桁台の所得税や法人税に比べると、突出して高い」

 こう語るのは、元国税調査官で税理士の武田秀和さん。調査された家庭の約80%で財産の申告漏れが指摘され、1件あたり約500万円の追徴税を納めている(国税庁、2012年7月~13年6月)。気になるのは、どんな家が調査対象になるかだ。

「基準はあってないようなもの。ベテラン調査官の豊富な経験とKSK(国税総合管理)システムに基づいて選定されます」

 と、武田さんは言う。

 KSKシステムは、預貯金の取引、金融資産や不動産の保有や移転など、個人の財産状況のデータベースだ。

「親の財産を隠そうと、多額の資産を自分の名義に移しても、KSKシステムの情報から読み取れることがあります」

 近年は、海外資産への監視も強化されている。

「国際的な取引は『租税条約』に基づいて国同士が情報交換をしています。100万円超の海外との送受金は、金融機関から税務署に『国外送金等調書』が提出されます。国外財産の合計額が5千万円を超える人は税務署に『国外財産調書』を提出しなければなりません」

 税務調査は、相続税を申告した翌々年の秋までに行われる。忘れかけていた頃に「調査にお伺いしたいのですが」と連絡が来るかもしれない。

AERA  2014年2月3日号より抜粋