善玉コレステロール(HDL)の値は高ければ高いほど健康にいい。こんな世間の常識が専門家の間では崩れてきているらしい。

 コレステロールはホルモンやビタミンなどの材料で、生きていくうえで欠かせない。主に肝臓でできる。これを体のすみずみまで運ぶのがいわゆる悪玉コレステロール(LDL)。コレステロールをたんぱく質や脂で包んだものだ。一方、余ったコレステロールを集めて、肝臓に戻すのがHDLだ。たんぱく質や脂がLDLと違う。血液中のHDL濃度が高く、LDL濃度が低い人は動脈硬化になりにくいことから「善玉」「悪玉」の名が付いた。

 ところが、体に悪さをする「悪玉HDL」がいるらしいとスイスのチューリヒ大学病院のグループが米臨床研究専門誌に一昨年発表して注目を集めた。健康な人から採ったHDLはいい効果があるが、動脈硬化症の人から採ったHDLは逆に害を与えたという。

 もともとLDLも、そのものが悪さをするのではなく、酸化したLDLが血管の内壁にたまることで動脈硬化の原因となる。

「酸化LDLと同じような働きをする酸化HDLが患者の中では増えているのかもしれない」と東京医科歯科大学の古川哲史教授(循環器内科)は話す。

AERA 2013年11月25日号より抜粋