「五輪競技施設が江東区に多くあり、豊洲がメーン駅になることを考えても、区として計画を前倒ししたいという思いはある」

 江東区地下鉄8号線事業推進担当課長の平川進氏は、こう力を込める。8号線延伸計画については1982年に帝都高速度交通営団(東京メトロの前身)が豊洲から住吉を経て亀有(葛飾区)までの区間の免許を申請しており、88年に開業した豊洲駅には延伸を見越して専用のホームも設置されている。沿線自治体で作る協議会が先行開業を求めている豊洲~住吉間は、東西に比べ南北の交通網がほぼバスに限られている江東区にとって悲願の路線。五輪は「神風」というわけだ。

 だが、これらの計画通り、五輪開催までに首都圏で「鉄道ビッグバン」が起こるのかといえば、状況はやや厳しいと見られる。そもそも建設前の環境アセスメントに3年程度かかるため、実際の建設区間は今から事業を始めたとしても工事は約3年と相当な強行軍を強いられることになる。

 都と地元自治体の意識も完全に一致しているわけではなさそうだ。池内光介・都交通企画課長は五輪に向けた鉄道整備の必要性について、「これまで大きなイベントがあった時も今の鉄道網でさばけていることを考えると、問題はないのかなと考えている」と語る。

AERA 2013年11月25日号より抜粋