カタールの首都ドーハ。中心部から車で30分ほど走ると、東京ドーム約280個分の広大な敷地に、真新しいキャンパスが林立する。

 米ジョージタウン大の「外交」に、カーネギーメロン大の「コンピューター科学」、ノースウエスタン大の「ジャーナリズム」──。米英仏8大学の名門学部がずらりと並ぶ。誘致を仕掛けたのは、タミム首長の母モーザ妃が会長を務めるカタール財団。各大学のえりすぐりの学部を一本釣りし、「総合大学」にするという大胆な構想に基づく「教育都市」だ。90カ国以上から集まった学生約2500人が学んでいる。

「前例のない心躍る高等教育の実験に魅せられた。大学側には資金リスクがなく、運営面でも自治が保障されたのが進出の決め手だった」

 ジョージタウン大カタール校のゲード・ノンネマン学長(54)は、そう語る。

 実際、誘致の条件は破格だ。最先端の資機材を備えた校舎に加え、教授陣や職員の給与、維持管理費まで財団持ち。大学側の持ち出しは「一切ない」。学生5人に教授1人。米本校の半分以下の少人数制が実現した。

 入試の選考基準やカリキュラムは本校と同じ。卒業証書も区別はない。在籍248人の出身国は44カ国。パキスタン出身の4年生で国際経済を専攻するサリム・ジアさん(21)は、

「シリア問題の討論ではシリア人学生と話し合える。世界中の学生との交流でグローバルな視野がもてるようになった」

 学生には、財団が家計に応じて年間数万ドルの授業料や、寮費をまかなう奨学金を貸す。卒業後、政府系企業や国際企業のカタール法人など「認定企業」で1~6年働けば、返済が免除される特典もある。

AERA 2013年11月18日号より抜粋