西高校大切にしているのは日々の授業。生徒と教師が双方向にやりとりする授業が展開されている。休み時間も、教師は質問攻めにあうという(撮影/高井正彦)
西高校
大切にしているのは日々の授業。生徒と教師が双方向にやりとりする授業が展開されている。休み時間も、教師は質問攻めにあうという(撮影/高井正彦)

 日比谷高校(千代田区)や東京都立西高校(杉並区)などの、都立高の人気が高まっている。偏差値はトップクラスの日比谷71、西70 で、私立の開成の72と難易度でほぼ匹敵している(市進学院調べ)。

 人気復活の背景には、都立高生の急激な学力の伸びがある。進学指導重点校(以下、重点校)に指定されている、日比谷、戸山、西、八王子東、青山、立川、国立の7校の難関国立大学(東大・一橋大・東工大・京大)+国公立大学医学部医学科の合格者数は、2004年の210人に対して12年は1.5倍以上の342人に増加した。

 そもそも都立高は、1967年に過度な受験競争を避けるため、エリア内の高校に合格者を振り分ける学校群制度が導入されたことで、人気が凋落した。

 志望校へ入学できないため、成績上位の生徒が私立へ流れ、名門都立高の難関大への進学実績が低下したのだ。そこで01年に導入されたのが、トップ校に予算を傾斜配分したり人事面で優遇措置を行ったりする重点校制度だった。さらに人気回復の起爆剤となったのが、同年に日比谷高校が全国で初めて導入した自校作成問題だ。

 市進学院情報出版室の長谷川一夫室長はこう分析する。

「公立高は同一問題で入試を行うのですが、日比谷が英国数3教科の問題を自校で作成したのです。レベルの高い難問で、優秀な生徒が集まりだしました」
 
 08年に起こったリーマン・ショックも追い風となる。都内私立高校の初年度納付金は平均約88万円。就学支援制度により一律年12万円程度支援されるが(所得に応じてさらに増額)、公立高校は授業料無償制度により授業料はただと、負担の差が大きい。親にとっては、同じ偏差値なら学費の安いほうへと思うのも無理はない。

「以前は考えられませんでしたが、重点校と早慶付属校に同時に合格すれば、今の受験生は重点校を選びます。学費の問題もありますが、難関大の合格者も増えており、都立でも十分いけると期待が高まっているのでしょう」(長谷川室長)

AERA  2013年9月16日号