ボードゲームにも購入という投資は要る。だが、一度買えばあとは知恵次第。勝つチャンスは均等に用意されている。また開発する側にとってもそれは同じで、いま、業界は「夢のある世界」だとも言う。

「開発費は、デジタルよりもはるかに安いですから」

 個人で開発することもあるから、作家性も出る。ゲーム大国ドイツの人気開発者に、フリードマン・フリーゼ氏がいる。「電力会社」といったゲームも出す社会派で、彼のつくった「むかつく友達、行きたくないパーティー」は傑作だ。ムードマンさんは絶賛する。

「むかつく友達~」は、人生の目的達成を目指す成長ゲームなのだが、人生体験のカードに「髪を染める」「セックス」「ギャンブル中毒」「両親の離婚」なんて項目がある。過激で毒があるが、人生の苦さを教えてくれる。

 デジタルゲームのテクノロジーは飛躍的に進歩してきたが、実際にはアイテムを集めて敵を倒す、あるいは成長するなど、パターンが画一的になった感もある。皮肉にも、テクノロジーと無縁のボードゲームの世界はかくも豊かなのだった。

AERA  2013年9月16日号