「黒帯」に象徴される柔道の段位。厳格な制度かと思いきや、そうとも言い切れないようだ。

「柔道3段です」「あの人は8段だ」などと聞けば、「強さ」を示していると多くの人は思うだろう。だが実際は違う。

 段位を認定している講道館によると、段位は審査会での結果に加え、「柔道精神の修得」や「柔道の普及発展への功績」なども含めて評定する。

「柔道の普及発展に顕著な功績があった者」には「原則として1回限り」、試合や形の演技を免除して昇段させる規定まである(地方団体によっては、何万円もの「免除料」を納めさせる)。同じ段位でも実力はまちまちということになる。

 柔道の段位が、愛好家たちの間だけでありがたがられる資格なら、門外漢がことさら疑問視することはないかもしれない。しかし現実には、段位は「公的」な性質も帯びている。

 それを端的に示すのが、公務員の採用試験で評価されることだ。警視庁や北海道警などは、初段以上の受験者について加点。神奈川、大分県警などは、3段以上で一定の大会成績を収めた人を特別枠で採用している。佐賀県は、中学保健体育の教員採用で、柔道か剣道の段位取得を条件にしている。

 入学試験で考慮する学校もある。都立高校の一部は、初段か同程度の技量をもつ中学生をスポーツ推薦枠の対象にしている。他にも、段位をプラス要素とみる学校は、中学から大学まで全国に数多い。

 段位制度を含め、「柔道村」にはそこでしか通用しない風習が残る。外部の声は気にせず、それらを大切に守っていくのも一つの道かもしれない。だがそれなら、少なくとも公益財団法人の看板は返上すべきだろう。

AERA 2013年6月10日号