職場では必ず通らねばならない、「電話の受け答え」という仕事。実はこれを苦手とする新入社員が増えているという。

 都内のベンチャー企業でアルバイトをしている女子大生(21)も「電話恐怖症」の一人だ。知らない相手、特に中年男性と受話器越しに直接、話すのが嫌だという。

「これまで、父親以外の男性と、電話で話すことはほとんどありませんでした。いたずら電話が怖いので、親から自宅の固定電話には出ないよう言われていますし、ケータイでも、電話帳に登録してある番号以外からの電話には出ないようにしています。サークルの男友達とはLINE、大学の教授とはメールでやりとりすることが多いので、受話器から聞こえる男性の低い声が怖いんです」

 電話恐怖症を克服するにはどうしたらいいか。大手人材派遣会社パソナグループの子会社「キャプラン」で、新人向けの電話応対研修を数多く手がける伊東絹子さんに聞いた。

「まず、配属先の部署の先輩、上司の名前と顔をいち早く覚え、保留や転送などその電話機の機能を使いこなせるようにしておくこと。これだけでずいぶんと気持ちにゆとりが出ます」

 慣れないうちは、電話が鳴り、相手が「○○社の××です」と名乗ったら、「○○社の××さんでいらっしゃいますね」と復唱するのもいい。その間にメモを取るための時間が稼げて、心に余裕が生まれるという。

「メモが取りやすいよう、利き腕でないほうの手で受話器を取るといいです。そして口角を上げ、怖がらず、自分で自分に『これは楽しいことなんだ』と言い聞かせて話すこと。感じのいい『笑声(えごえ)』で話すことが重要です」(伊東さん)

AERA 2013年5月6日・13日号