雅南ユイさん。ベンチャー企業「ONIGIRI」の仲間たちと。高校生のとき、いじめにあったのが原因で引きこもりになった。外に出られるようになったのはコスプレのおかげだった。コスプレは人と人の壁をなくす。「世界中の人と友達になりたい」(撮影/高井正彦)
雅南ユイさん。ベンチャー企業「ONIGIRI」の仲間たちと。高校生のとき、いじめにあったのが原因で引きこもりになった。外に出られるようになったのはコスプレのおかげだった。コスプレは人と人の壁をなくす。「世界中の人と友達になりたい」(撮影/高井正彦)

 海外で高い評価を得ている文化のひとつ、コスプレ。単なる趣味ではなく、最近ではビジネスという視点からも注目を集めている。

 12年10月、東京・六本木ヒルズなどで開かれた「クール・ジャパン マッチンググランプリ」。経済産業省が進める「CREATIVE TOKYO」構想の一環で、参加企業がグーバルビジネス展開についてプレゼンテーションし、協力できる企業同士をマッチングする。

 コスプレ文化の発信を目指すベンチャー企業「ONIGIRI」社長で、自らもコスプレーヤーである雅南(かなん)ユイさんは、壇上で大きな拍手に包まれていた。会場で行われたプレゼンに対する人気投票で、並み居る大企業を含む約60社を抑え、「ONIGIRI」が最多得票を得た。

 4年ほど前から秋葉原を中心にコスプレーヤー兼地下アイドルとして活動してきた雅南さんは、仲間たちと会社をつくったばかりだ。同社は、これまで個人の趣味のように見られていたコスプレを、海外にも幅広いファンを持つ発信力あるコンテンツであると提案。ビジネスモデルとして、コスプレーヤーが国外のイベントで企業ブースのPRに参加したり、商品の販促活動を行ったりするとした。この日のプレゼン終了後、流通や不動産、エンタメなど約30社からさっそく商談が寄せられた。

 雅南さん自身、ネットで寄付を募るクラウドファンディングで資金を集めたり、主催者から招待を受けたりして、何度も海外のコスプレイベントに参加し、多くの外国人コスプレーヤーの友人を持つ。雅南さんのコスプレを見ただけで、見ず知らずの人たちが親しげに話しかけてくれることに驚いた。領土問題で日本と中国、韓国の政府間で対立が生じたときも、コスプレーヤーのコミュニティーは、微動だにしなかったという。

「コスプレは日本が世界に誇るべき文化だと思います。政治情勢に関係なく、日本と世界を平和につなげる力を持っていることにも注目してほしい」

AERA 2012年12月31日号