ある休日の昼下がり。ぼーっとテレビを眺めていたら、いきなり目に飛び込んできたCMの映像に釘付けになった。

 胸元がくり抜かれたピチピチの茶色いトップスに黒のホットパンツ姿の女性5人が、スローモーション映像で次々に登場。誘うような目でストローを口にくわえ、周りを白い液体が飛びかう……。

 グリコ乳業のカップ飲料「ドロリッチ クリーミーカフェゼリー」のCMだ。グリコといえば、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層に向けた商品のイメージが強い。ちょっと、これはエロすぎないか。

「ドロリッチ」は、コーヒーゼリーとクリームが混ざった「飲むデザート」として2007年に発売。ツイッターで「ドロリッチなう」とつぶやくのがはやったほどの人気商品だ。

 今回のCMは10月、商品リニューアルとともにオンエアされた。

 インターネット上では賛否両論だ。「朝に見たので、元気に会社に行ける!」「やっと録画できた!」「CMが頭から離れない。ドロリッチガールズいい!」という称賛の声から、「不快だ」「息子には買いたくない」とのブーイングも。

「海外ブランドには、もっと性的イメージの強いCMがありますよ。ランジェリー、香水、ジーンズ、アルコールなどの嗜好品に多いですね」

 そう話すのは日本大学法学部の湯淺正敏教授(広告論)だ。女優のシャーリーズ・セロンがドレスを脱いでいくクリスチャン・ディオールの香水「ジャドール」のCMは、ため息が出るほど美しい。男性用フレグランススプレー「AXE」は、「AXEをつけると女性にモテる」ことをアピールするため、男性が女性と絡み合うシーンのあるCMも。こうしたAXEのCMは、日本では放映していないようだ。

「美人、動物、赤ちゃん、セックス、スポーツといった要素は、人の目に留まりやすいと言われています。不快感を持たれるとだめですが、人の感じ方は千差万別ですから」(湯淺さん)

 ドロリッチはウェブサイトでガールズのインタビュー動画を配信。胸を寄せながら商品をアピールする場面などは、CMに劣らず刺激的だ。

 リニューアル前と比較して、サイトのページビュー(PV)は200倍に伸び、売り上げも倍増。計画数量を上回る勢いだという。

AERA 2012年12月3号