新設時に当然のごとく、防音ガラスを使用する施設も(撮影/写真部・久保木園子)
新設時に当然のごとく、防音ガラスを使用する施設も(撮影/写真部・久保木園子)

「園庭で遊ぶ子どもたちの声がうるさい」。特に都市部で、そんな地域住民の訴えが相次ぐ。静かに暮らしたいと願う住民と、のびのび遊びたい子どもたち。両者の権利は共存できるのか。

 都内のある保育園では4年前、卒園式で園児が披露する和太鼓の演奏をめぐって警察官を呼ぶ事態になった。

「公営住宅に囲まれた土地に開園して30年、初めて『和太鼓の練習をすぐやめるように』という匿名の手紙が来ました」

 と園長は説明する。

 園側はただちに屋内で練習することにしたが、1週間後、再び無記名の投書が来た。

「自分は精神疾患を持っている。このままでは、何をしでかすかわからない」

 脅迫ともとれる内容に、園側は警察に相談。その年だけはパトカー2台が警備するなか予定通り卒園式で演奏したが、翌年からは園児の安全を優先させて、中止せざるを得なかった。

「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんは、

「騒音問題は昔からありました。ただ最近は地域という場がなくて、個人の不快感が直接ぶつかっているように見えます」

 と懸念する。

 400人以上いる会員のメーリングリストでは、これまでに何度か、子どもの声が周辺住民から騒音と受け取られることが話題になった。

「世間話をするような地域関係があれば、少し見え方が違うかもしれません。地域の人間関係の希薄化が、子どもの声へのクレームという形で現れているのでは」(普光院さん)

AERA 2012年11月26日号