マスコミの批判や内部からの裏切り... 世界初のRPG『D&D』を生んだ男の波乱万丈すぎる一生 〈BOOKSTAND〉|AERA dot. (アエラドット)

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マスコミの批判や内部からの裏切り... 世界初のRPG『D&D』を生んだ男の波乱万丈すぎる一生

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『最初のRPGを作った男ゲイリー・ガイギャックス〜想像力の帝国〜』マイケル・ウィットワー,加藤 諒,柳田真坂樹,桂令夫 ボーンデジタル

『最初のRPGを作った男ゲイリー・ガイギャックス〜想像力の帝国〜』マイケル・ウィットワー,加藤 諒,柳田真坂樹,桂令夫 ボーンデジタル


 『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』『テイルズ オブ』シリーズなど、今やコンシューマーゲームの花形でもある「ロール・プレイング・ゲーム(RPG)」作品。では、世界初のRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』というタイトルを聞いたことはあるだろうか。


 『D&D』とはアメリカで生まれたテーブルゲームで、紙やサイコロなどの道具を用いてルールと会話によって遊ぶ対話型のゲーム。世界初のRPGとしてさまざまなゲームに影響を与えたが、意外にもゲームを作ったクリエイターの名前は知られていない。


 そこで今回は『D&D』のクリエイターに焦点を当てた書籍『最初のRPGを作った男ゲイリー・ガイギャックス ~想像力の帝国~』(ボーンデジタル)に注目。


 『D&D』のゲームデザイナーであるゲイリー・ガイギャックス氏。世界初のRPGを生み出した彼のルーツは、幼い頃の怪奇現象だった。幼いゲイリー氏が猫のキューボールを膝に乗せ、応接間でエドガー・アラン・ポーの小説『アッシャー家の崩壊』を読んでいた時のこと。もともと半開きの扉が、さらに50センチほどひらいたのだという。そして肉体を持たないものの足音が部屋に踏み込み、ゲイリー氏の座っている椅子のそばでぴたりと静止。その時のことを彼は以下のように記している。


「私は恐怖に凍りついて椅子に座ったままで、キューボールはフーッと声をあげて獣のように唾を吐いた」(本書より)


 実はゲイリー氏がこの時に住んでいた家では、彼だけでなく彼の家族や友人も超常現象に遭ったそうだ。これらのことが現実のものかどうかは定かではないが、当時から想像力が盛んだったゲイリー氏にさらなる燃料を与えたのは確かだろう。


 そんな想像力豊かな子どもだったゲイリー氏も成長し、海軍への入隊と除籍、結婚を経験。同時に紙とサイコロを使った「ウォーゲーム」にのめり込んでいくのだった。しかもゲームにのめり込みすぎたことが原因で、家族を抱えながら無職に。しかしその結果、よりゲームに熱中したゲイリー氏は、ガイドン・ゲームズ社のドン・ラウリ氏と契約して、同社のゲームに関わっていく。


 そんなある日、ゲイリー氏は興奮で眠れなくなるようなゲームを体験する。それは各種データをあらかじめ決めて審判が物語を進行させるだけだが、かつてないほどプレーヤーが夢中になるゲームだった。


 この体験をもとに、猛烈にゲームを仕上げ始めたゲイリー氏。後年、彼は以下のように語っていた。


「私は書いた。それは主に、私の中にたくさんの情報があって、書かずにいられなかったからだった。私が『これだけはやるまい』と思っている、一番大事なことは、『書く気が起きたら後回しにしない』ことだ。いい思いつきは一時のもので、すぐ消えてなくなってしまう。だから芸術の女神(ミューズ)がやって来たなら、すごい勢いでやってしまわねばならない」(本書より)


 その後、多くの困難を経験しながらも、ゲイリー氏は無事『D&D』を発売した。しかし発売後も同ゲームは、さまざまな壁へとぶつかることになる。コスプレなどをしながら凝った方法で『D&D』を遊んでいた少年たちが、暖房用の蒸気を送るトンネルで行方不明になったのだ。しかも世界的に有名な新聞『ニューヨーク・タイムズ』にそのニュースが掲載。『D&D』は「一種珍妙な頭脳ゲーム」と紹介された。


 そのうえ熱心なマスコミによってこの件はさらに激化。「『D&D』は青少年を自殺に導いたり悪魔崇拝者を勧誘するための手段」という主張まで勃発してしまう。いつの時代でもゲームは、「そういう目」で見られてしまうものなのだろうか。


 この後も自分の会社を勝手に売りに出されたり、内部からの裏切りによって会社を乗っ取られたりしたゲイリー氏。散々な結果に終わった彼のクリエイター人生だが、結果的には『ゲームスポット』誌の「ゲーム界に大きな影響を及ぼした三十人」や『SFXマガジン』誌の「SF界のパイオニア五十人」にランクインするなど高い評価を得ている。


 また、数ある娯楽作品の中にも『D&D』の影響が。例えばスティーヴン・スピルバーグ監督の大ヒット映画『E.T.』の中で、主人公が友人たちと一緒に遊んでいたゲームこそ『D&D』だった。映画『アイアンマン』シリーズの監督として知られるジョン・ファヴローも『D&D』について、クレジットで以下のような文章を流している。


「想像力。語り口。雰囲気作りやバランス感覚といった概念を理解すること。これらすべての基本となった」


 世の中に多大な影響を与えた伝説のゲーム『D&D』。多くのゲームの生みの親とも言える彼の人生を詳しく知りたい人は、ぜひ本書を読んでみてほしい。


(記事提供:BOOK STAND)

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