2008年のリーマン・ショック後、紙幣や有価証券などの信用が失墜するなか、美術作品の価値が上昇。また元々、欧米では家でもオフィスでも、アートが幅広く楽しまれており、コレクターも数多く存在するのだといいます。



 そのためセレブのなかにもアートの目利きコレクターが。たとえばそのひとりがエリック・クラプトン。



 クラプトンは、2012年のサザビーズ・ロンドンのオークションに、1994年に制作されたゲルハルト・リヒターの絵画「アブストラクテス・ビルド(809-4)」を出品。これは自身が、2001年にサザビーズ・ニューヨークで、200万ポンド(約3億4900万円※01年度年間平均レートを元に算出)で購入した作品3点のなかの1点であり、落札予想価格は900万〜1200万ポンド(約11億3400万円〜15億1200万円)でしたが、結局その倍となる約2132万ポンド(約26億9000万円)で落札されたそうです。



 11年間で30倍。いかにクラプトンが目利きであったかを物語っているエピソードだといいます。



「実は彼はミュージシャンとして世に出る前に、一年間、アートを勉強していた。クラプトンが所有していたことによるプレミアも多少はあっただろうが、無名の人が持っていたリヒターの作品も高く売れている。やはり絵画の放つ力を見抜く眼があった。だから、十一年近く楽しんだのち売っても、十分に報われた。もしかして、その資金でまた別の若手の作品を購入しているかもしれない」(本書より)



 同じく、マドンナもまた90年代から、アートのコレクターとして知られており、フリーダ・カーロ、タマラ・ド・レンピッカら、時代を強く生きた女性アーティストの作品を中心に集めているとのこと。



 2013年にはサザビーズ・ニューヨークで、フェルナン・レジェの「赤いテーブルの三人の女性」を売却。落札予想価格の500万〜700万ドルを少し上回る720万ドル(約7億円)で落札され、売上金の全額を自身が設立した、アフガニスタンやパキスタンなどの女子教育を推進する財団であるレイ・オブ・ライト基金に寄付したといいます。



 その他、レオナルド・ディカプリオもアート好きであり、オークションルームのVIP席で見かけることももはや珍しくないそう。収集している範囲も幅広く、2013年にはクリスティーズのオークションで若手作家の作品33点を3880万ドル(約39億円)で売却、環境と野生保護のために設立したレオナルド・ディカプリオ財団の資金に充てたそうです。



 巨大なマネーが動くアート市場。そのオークション現場ではいったい何が行われているのか、そして現状はどうなっているのか。本書『巨大アートビジネスの裏側』では、アート業界に30年近く携わってきた石坂泰章さんだからこそわかる、知られざるアートビジネスの実態が解き明かされていきます。