50年代には3D映画ブームが起こり、あのヒッチコックも、今から60年以上前に3D作品をつくっていたのです。



 さて、本書はタイトルにもある通り、巨匠・ジャン=リュック・ゴダールについて論じられたもの。ゴダール自身も、2014年に発表された『さらば、愛の言葉よ』で3D映画の製作に挑戦しています。



「実のところは、2Dだろうが3Dだろうが、観客が対峙し見つめているのは、徹頭徹尾、スクリーンに投影された光線の束でしかない。(中略)だからこそ、ゴダールは3Dで『さらば、愛の言葉よ』を撮ったのだ。彼はこの映画で、ここまで記してきた『デジタル3D性』を、ことごとく無視、或いは蹂躙している」



 ここに書かれた「デジタル3D性」とは、『アバター』『ゼロ・グラビティ』に見られるようなデジタル技術による美麗な3D映像により、観客が非現実性とリアリティをともに実感できることを指します。そしてゴダールは、従来のデジタル3D映画で行われてきた技法への反駁として、単に立体的に見せるだけではない、しかし3Dだからこそ実現できるある仕掛けをつくりました。それが何であるかは、作品と本書『ゴダール原論』で確かめてみてください。