身の回りで目にする、さまざまなグラフィックデザイン。商品や宣伝物のデザインをはじめ、企業と消費者を媒介する存在として機能しながら、紙媒体を中心に発展してきたグラフィックデザインですが、デジタル化の進む社会の変化とともに、そのあり方もまた変わってきているといいます。



 本書『○○化するデザイン』では、現在のデザインを考える際のポイントとして、川上化・社会化・流動化という3つのキーワードを設定。そのキーワードのもとに、最先端で活躍するデザイナーたちが、グラフィックデザインの現在、そしてこれからのあり方について、自身の作品等を例に挙げながら分析していきます。



 3つのキーワードのうちのひとつ、社会化するデザインでは、「リーマン・ショックや東日本大震災などを経て、人々の価値観が大きく変わり、教育、地域、コミュニティなどあらゆる局面にデザインが求められる中、社会とグラフィックデザインの関係性を模索」(本書より)しているというデザイナーたちの、具体的な仕事を紹介していきます。



 たとえば「ロッテ キシリトールガム」や「明治おいしい牛乳」などの商品デザイン、そしてNHK Eテレで放送中の「デザインあ」の総合指導など、幅広く活躍している佐藤卓さんは、デザイナーのみならず、行政や経営者たちにもデザインに対する意識が備わっていることの必要性を説きます。



 実際、社会のなかで最終的にデザインを決定するのは、行政や経営者たち。そのため、今の子どもたちが30年後、大人になり社会のさまざまな場面で力を持ち始めたとき、デザインというものを意識した上で行政や企業のあり方を考えられたとしたら、世の中は少し変わるのではないかと佐藤さんは述べます。



 そこでデザインの考え方を子どもの頃から広く浸透させるためにも、子ども向けデザイン番組「デザインあ」では、あらゆる物事をデザイン的な視点から取り上げ、子どもたちを触発できるようなコンテンツをつくることを目指しているのだといいます。



 大人とは異なり、感覚的に物事を理解する子どもたち向けに、番組では、身体で感じてもらうことを重視。映像なども、説明的にし過ぎず、子どもたちに直感的に面白いと感じてもらえるものをつくるよう意識しているそうです。



 デザインとは、「これからのために、いま何をするべきかを考えられる想像力と、それを実践する力のこと」だと佐藤さんはいいます。



 普段何気なく目にしているデザイン。それらが作られている最新の現場では、どのようなことが考えられているのかが伝わってくる一冊となっています。