今から18年前の1997年、スティーブ・ジョブズ氏が中心となって仕掛けられたアップル社の広告キャンペーン「シンクディファレント(Think Different)」を覚えていますでしょうか。「クレイジーな人たちがいる」とのナレーションではじまる、その日本語版テレビCMでは、世界を変えてきた天才・17名として、アインシュタイン、ピカソ、ヒッチコック、チャップリンたちと共に、ジョン・レノンが挙げられています。



 40年10月9日に英国リヴァプールで生まれ、それから40年後の80年12月8日に米国ニューヨークで没したジョン・レノン。一方、55年2月24日、米国カルフォルニア州サンフランシスコに生まれ、2011年10月5日に同州パロアルトで没したスティーブ・ジョブズ。この2人の天才の間には多くの共通点があるのだと、書籍『レノンとジョブズ 変革を呼ぶフール』の著者・井口尚樹さんはいいます。



「レノンとジョブズの共通点はあまりにも多い。実父母に放棄された子であり、直感と変貌の人であり、既成のスタイルを破るクリエイター。それゆえ、ふたりは失敗もおかす。時おり滑稽でもある」(同書より)



「時おり滑稽でもある」、つまりフール(fool)であること。たとえば、その姿勢は、ジョン・レノンにおいては63年、ロンドンのBBCスタジオでのビートルズのメンバー紹介時に述べた、ジョン自身の言葉にも見受けられるのだと、井口さんは指摘します。



 その自己紹介は以下のようなもの。



「ぼくはリンゴ。ぼくはドラムを奏る(I'm Ringo, and I play the drums)」

「ぼくはポール。ぼくはベースを奏る(I'm Paul, and I play the bass)」

「ぼくはジョージ。ぼくはギターを奏る(I'm George, and I play a guitar)」

「ぼくはジョン。ぼくもギターを奏る。ときどき馬鹿もやる(I'm John, and I too play a guitar. Sometimes I play the fool)」



 一方、スティーブ・ジョブズ。05年、スタンフォード大学の卒業式でのスピーチの締めの言葉「ハングリーであれ、愚直であれ(Stay hungry, stay foolish)」はあまりにも有名です。



 このように、2人は共に「フール」に目を向けていたのだと、井口さんはいいます。



「愚者の目はごまかせない。愚者には変革の力がある。レノンもジョブズもそれをわかっている。価値を逆転させる存在が、フールである」(同書より)



 本書では、45個にも渡る2人の共通点を、さまざまなエピソードを通して分析していきます。そのなかには「日本文化に深く触れ、インスピレーションを受ける」「キリスト教から離れ、禅に啓発される」といった、日本と密接に関係するものも。



 新たな世界を開拓してきた天才たちは、共にどのような眼差しをもって物事をとらえてきたのか、多くの問い立てながら果敢に迫った一冊となっています。